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市民と結婚して日本在住。アメリカでの永住権申請はリスク大?

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アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

20年近くの経験を活かし、ビザ・グリーンカード申請に関する情報を事例をもとにQ&A形式でお答えします。

2018年 8月 23日更新

第38回 : ビザ申請却下=移民法廷に出頭?

Q

テレビのニュース番組で、ビザ申請が米国移民局に却下された場合、申請者は、移民法廷に出廷しなければならないと報道されていました。これは本当でしょうか?

A

米国移民局(通称USCIS:United States Citizenship and Immigration Services)は、2018年6月28日に、トランプ政権による不法滞在者対策の一環として「PM-602-0050.1」と称されるポリシー・メモを発表しました。ポリシー・メモとは、USCISが移民法や当該連邦規則集(8 CFR)の解釈や局の審査方針などを紹介する役目を持つと同時に、移民法の「ルール」の一角を担う大事な役割を果たすものです。

このメモの発行により、アメリカ国内でビザ・ステータス申請や永住権申請を行う方は、今まで以上に大きなリスクを負って申請書類を提出することになります。今後は、これらの申請が却下という結果に終わったことによって、申請者が“一瞬”でも不法滞在者とみなされる場合は、国外退去対象となり、移民裁判所への出頭命令(通称NTA:Notice to Appear)が必ず発行されることになります。ただし、例外として、USCISの書類審査官(通称ISO:Immigration Services Officer)が、出頭命令の発行に異議の申し立てをする場合が挙げられています。

例えば、あなたが米国内で、H-1B(特殊技能職)ビザ・ステータスからE-2(通商条約駐在員)ビザ・ステータスに書き換え申請を行うとしましょう。もし滞在資格の有効期限(I-94)が切れる直前に申請書類がUSCISに受理されたと仮定した場合、申請中は有効期限を超えても合法的に滞在しているとみなされます。しかし、ここでUSCISのミスにより、追加書類要請(RFE)がスポンサー会社にも担当弁護士も届かなかったことによって、書き換え申請が却下されたとします。通常ならば、却下通知から30日以内に、USCISに不服の申立て(Motion to Reopen)を提出することによって審査が再開するはずです。でも、新ポリシーが導入されると、このような状況の場合でも、あなたには高確率で出頭命令が発行されてしまうのです。理由は、あなたが“一瞬”でも不法滞在者になったからです。

ただし、出頭命令の発行のタイミングに関しては、細かい制限などはなく、却下された日から数カ月後や1年後になる可能性も考えられます。ただし、出頭命令が発行されれば、記載された日時に移民法廷に出廷することを余儀なくされ、欠席した場合は5年間、場合によっては10年間もアメリカへの入国が拒否される可能性があります。ちなみに、出頭命令は、申請者のアメリカの住所に郵送されてしまうと、たとえ申請者が既に帰国していた場合でも 有効なので、非常に厄介です。

また、申請者が出頭命令発行に基づき移民法廷に出廷した場合、移民裁判が開かれるため長期滞在を強いられます。移民法廷は、現時点での未処理の案件数が70万件を超えている政府機関です。「PM-602-0050.01」の導入により、未処理の案件数が急激に増えることは安易に予想できます。以前は、連邦規則集に定められた場合や詐欺行為が断定されたケースなど、限られた状況の中でしか出頭命令は発行されませんでした。申請者の犯罪行為を理由にケースが却下された場合も、2011年11月7日に発行されたポリシー・メモ「PM-602-0050」により、USCISとしては米国移民税関執行局(通称ICE:U.S. Immigration and Customs Enforcement) に出頭命令の発行の判断を委ねていました。USCISは、移民法上の「恩恵」審査をサービスとして提供する役割を執行する政府機関であることに対し、ICEは移民法違反を取り締まる役割を執行する政府機関という認識が、ここ数年は一般的だったのです。しかし、これからは「PM-602-0050.1」は、今までの方針を急激に転換させる上で、USCISに移民法違反を取り締まることを義務付けることになります。

この急激な方針転換の必要性に関して、USCISは、大統領令第13768号「アメリカ合衆国内部における公共の安全の強化(Enhancing Public Safety in the Interior of the United States)」を引用しています。この大統領令は不法移民を「かくまっている」とされる、いわゆる「聖域都市(Sanctuary City)」に対する連邦補助金停止を訴えるトランプ大統領の方針が発表され、世界メディアから注目を浴びたことで有名です。そこには「全ての国外退去強制可能な不法移民に対して移民法に忠実な執行を確保するために、利用可能な制度や資源を全て活用すること」と捉えられる文章が記載されています。果たして「PM-602-0050.1」の導入によって、不法移民の数が実際に減少されるのかは予測できません。

在米邦人にとっても非常に気になるニュースですが、幸いにも、USCISは7月30日に「PM-602-0050.1」の導入の延長を発表しています。理由としては、USCIS局内の各部門による新ポリシーの導入や対策方法が未だ明確でないことが挙げられています。けれど「PM-602-0050.1」が導入されてしまうと、今後のビザ申請は今まで以上に入念に、かつ滞在資格の失効予定日からかなり余裕を持って申請書類を準備することが重要になるでしょう。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。
今回のコラムニスト
Attorney大橋 幸生

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)を卒業後、アメリカ法学博士号(JD)を取得。アメリカ法全般における判例リサーチの経験をもとに、総合的な見地からの移民法のアドバイスを行う。

2018年 8月 23日更新

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Columnist's Profile

CEO/Attorney瀧 恵之(瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation)

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年近くに渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

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