コラム

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2021年11月 29日更新

第78回 : E-1配偶者ビザの就労許可更新中。許可を待たずに就労は可能?

Q

私は、E-1ビザを保持している主人の配偶者として同じくE-1ビザを基に、就労許可を取得し流通関連の会社で働いています。現在、就労許可を更新中しているのですが、新しい就労許可が来る前に、以前の就労許可の有効期限が切れてしまいました。そのせいで働くことができず、会社の人事部からの指導で自宅待機となっています。就労許可が切れる前に、かなり余裕をもって更新申請をしたのですが、半年以上経っても何の連絡もありません。しかし、最近新しい就労許可が来なくても働けるようになったといううわさを耳にしました。それについて詳しく教えてください。人事部からの再三の問い合わせでとてもプレッシャーを感じています。

A

Lビザ、E-1/2 ビザを配偶者が保持していることによって、L-2ビザ、E-1/2 ビザを保持している場合は、移民局に就労許可を申請することにより、就労することができます。

L-1 ビザの配偶者ののビザは、L-2 ですが、E-1/2 ビザの配偶者のビザは、同じく、E-1/2 ビザなので、混乱を避けるため、このコラムでは、E-1/2 を取得した人のビザを「E-1/2 Primary ビザ」、その配偶者としてE-1/2 を取得した人のビザを「DependentE-1/2 ビザ」と呼ぶことにします。L-2、Dependent E-1/2 ビザ保持者が、就労許可(EAD: Employment Authorization Document)を取得した場合は、この就労先はL-1、E-1/2 Primary ビザの人の就労先と関連している必要はなく、またL-1、E-1/2 Primary の場合と違い、学歴・経験等の条件も無いため、一般的にはL-2、E-1/2 Dependent の人は、特定の場合を除いて好きな職場で働くあるいはL-2、E-1/2 Dependent 自身がビジネスを行うこともできます。

パンデミック以降、移民局の労働力が充分でないことなどが理由となり、申請の種類(カテゴリー)により、大幅な遅れが目立っています。例えば、E-1/2 ステータスへの変更、更新の申請(ここで言うステータスの申請とは、日本のアメリカ大使館・領事館で発行されるビザとは違い、アメリカ国内において移民局を通して行われる申請の事を指します)、あるいは、学生(F-1)のステータスへの変更などでは、半年以上、長い場合は1年以上を要しています。あなたの就労許可(EAD)の更新も例外ではなく、半年以上を要しており、この遅延により、仕事を失うリスクを負っている人はあなた以外にも多くいます。

移民局は、この状況を鑑み、また関連する事案における集団訴訟(一定のグループの集団が移民局を相手取って訴訟を行うこと)の背景もあり、2021年11月12日付(施行)で、一定の条件を満たす場合は、更新中の就労許可を待たずして就労できると発表しました。この条件を満たすには、就労許可の有効期限が切れる前に更新申請を行っていること、更新の際の申請カテゴリーが以前の就労許可と同じであることとされています。この条件を満たす場合は、有効期限の日から180日までの間就労が可能であるとされています。従って、あなたの場合は今すぐにでも就労が可能なことになります。

あなたが、会社から就労資格の証明(I-9 フォーム)の提出を求められた場合は、有効期限の切れた就労許可に加えて、移民局から送られてきた更新申請のレシートを提出することで証明されます。その際、移民局での受付日があなたの以前の就労許可の有効期限以前である必要があります。また、就労可能な期限は、以前の就労許可の有効期限+180日目の期日をI-9 フォームに記載することができます。ただし、更新申請が却下された場合はその時点で終了になります。

移民局は、今後の対策として、L-2、E-1/2 Dependent ビザの保持者は、就労許可の申請を行うことなく、就労を可能にする方向に向かうとしています。これには、L-2、E-1/2 Dependent ビザの I-94 に、Spouse (配偶者)の記載を行うことにより、就労可能な証明とするとしています。現在のところ(2021年11月29日現在)、移民局はこのシステムを構築中で、この新しいシステムにおける Spouse の記載のある I-94 を受け取るまでは、就労許可の申請が必要であるとしています。

注意事項 : このコラムは、11月29日現在における情報を基にしています。近日中に新たな変更(特にコラム最後の I-94に関して)が加えられる可能性もありますので、最新の情報を基に判断されることをお勧めします。

2021年11月 29日更新

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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