コラム

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2017年 9月 13日更新

第27回 : Lビザから配偶者スポンサーで永住権を取得するには?

Q

現在、Lビザステータスを所持し、米国のスポンサー会社で働いています。これから米国市民の方との結婚を考えていますが、結婚をすれば、私もビザを通して就労する必要がなくなるのでしょうか?できれば手続きのために日本に帰国したくないと思っています。

A

結婚をしてグリーンカード申請をすれば、あなたはグリーンカード保持者として仕事をすることが可能になります。配偶者スポンサーを通しての家族申請におけるグリーンカード申請は、2つのカテゴリーに分かれます。1つは米国市民(アメリカで生まれた方)か、あるいは米国市民権を取得した(帰化した)方との結婚です。もう1つは、米国グリーンカードを取得している方との結婚です。

申請方法も2つのカテゴリーに分かれます。米国国内でグリーンカード申請をするか、米国国外(日本)でグリーンカード申請をするかの二通りです。あなたはLビザステータス保持者なので、米国国内でのグリーンカード申請が可能です。米国国内で申請をする場合は、帰国をする必要がありません。

米国市民の配偶者としてグリーンカード申請をする場合は、用意する申請書類は主にフォームI-130とフォームI-485です。今年の2月にフォームI-130が更新され、4カ月後の6月にはフォームI-485が更新されました。弁護士を通さずご自分で申請をする場合は、必ず最新のフォームに必要な情報を記入する必要があります。これらを同時に米国移民局に提出してからグリーンカードが取得できるまで、約半年かかります。もしLビザステータスを失効したとしても(例:スポンサー会社を退社するなど)、米国移民局から届く受領書(Receipt Notice)に記載されている受理日付から、米国で合法的に滞在できます。

また、Lビザステータスを失効していても、グリーンカード申請中に合法的に働くことができます。これは通称“ワークパーミット”と呼ばれる労働許可カード(Employment Authorization Card)を上記のフォームI-130とフォームI-485と同時に、フォームI-765を提出することによって取得できます。これまでこのワークパーミットは、グリーンカード申請から90日後に必ず発行されたのですが、今年の1月に法律が変わり、今ではワークパーミットの発効に平均120日ほどかかっています。発行期間が延びたことによって、ワークパーミットがグリーンカードと同時に発送されたというケースも最近では多々あります。

また国外渡航を希望する場合は、フォームI-131を上記の申請書類と同時に提出すれば、アドバンスパロール(再入国許可証)が発送されます。大抵は別の書類が届くわけではなく、ワークパーミット自体がアドバンスパロールの役割を持ちます。ワークパーミットの表の下部に「Serves as I-512 Advance Parole」と記載されていれば、国内でグリーンカードを申請中でも海外渡航が可能になります。言い換えますと、国内でのグリーンカード申請の大きな注意点は、アドバンスパロールが承認されるまでの約4カ月間は、事前に緊急申請をしない限り、国外渡航ができないということです。

もう一点ですが、米国市民との結婚を通してのグリーンカード申請のメリットは、主に3つあります。

  1. 米国市民との結婚をする場合、あなたが仮に過去に滞在許可を失効した上で米国に滞在し続けた(アウトオブステータス)、あるいは、過去に180日以上アウトオブステータスになり、不法滞在(オーバーステイ)をしたとしても、移民法上それを理由として米国移民局はあなたのグリーンカード申請を却下することはできないということです。
  2. 就労ビザ(あるいはステータス)を取得せずに、不法労働をしたという事実を理由としてグリーンカード申請の却下とはならないことです。
  3. 配偶者が米国市民権保持者である場合は、米国市民権を通常より2年間早く(3年目から)取得できることです。

配偶者を通してのグリーンカード申請は、就労ビザ申請や雇用ベースのグリーンカード申請に比べると手順は比較的簡単なものですが、安易には望めません。情報の記入ミスがあると、場合によっては詐欺や故意による不正確な情報により移民による恩恵を得ようとしたとみなされ、あなたは国外退去対象となる可能性があります。申請の前に移民弁護士と相談することをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。
今回のコラムニスト
Attorney大橋 幸生

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)を卒業後、アメリカ法学博士号(JD)を取得。アメリカ法全般における判例リサーチの経験をもとに、総合的な見地からの移民法のアドバイスを行う。

2017年 9月 13日更新

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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