コラム

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2016年 4月 4日更新

第10回 : アメリカを長期で離れる場合のグリーンカード保持に関して

Q

私は、9年前にグリーンカードを取得しましたが、今年の春から東南アジアへの転勤が決まり、アメリカを離れなければならなくなりました。しかしアメリカを長期で離れるとグリーンカードを失ってしまうという話を聞きました。子供の学校や将来も考え、アメリカに戻って来れるチャンスを手放したくありません。何か手段はあるでしょうか?

A

あなたの場合、2つの方法が考えられます。Re-Entry Permit を申請する方法、あるいはアメリカの市民権を取得する方法です。まずRe-entry Permit は、アメリカ国外に長期に渡って滞在していても、アメリカに戻る意志を表すことで、グリーンカードを保持できるシステムです。このRe-entry Permit が無い状態で、グリーンカードを保持するには、連続して180日以上アメリカ国外に滞在しないことが1つの条件として挙げられます。また180日以内であっても、出入国を長期にわたって継続し、合計してアメリカ国外での長期滞在(過去5年のうち2年半以上)を続けると、アメリカでの永住の意志を放棄したと見做され、グリーンカードを失う可能性があります。例えば、日本に連続して5ヵ月間滞在し、アメリカに戻ってきた後、アメリカに一週間だけ滞在し、再度、日本に5ヵ月滞在するといったことを繰り返すような場合は、アメリカへの入国の際にグリーンカードを失うことになります。この場合は、入国審査官にグリーンカードを取り上げられ、コンテスト(異議申し立て)を行うかどうかが聞かれます。コンテストを行わない場合は、他の一般の観光者と同じように、観光のステータスによって入国を許可され、90日までの滞在資格が与えられるという形になります。コンテストを行う場合は、移民局の裁判所への出頭日をその場で知らされます。裁判所出頭の際には、アメリカでの永住の意志があるかどうかが問題となり、この意志がないと判断されれば、永住権を失うことになります。この判断においては、アメリカでの永住の意志があることの客観的な状況証拠(例えばアメリカに会社を持っていて、アメリカ市民の従業員が多数いるような場合)があるかどうかが吟味され、判断基準は、極めて厳しいものであると理解した方がよいでしょう。

Re-entry Permit を申請した場合は、一回の申請で最長2年までアメリカ国外に滞在することができます。また、その間のアメリカへの入出国も自由です。Re-entry Permit の申請は、Form I-131 の申請書にグリーンカード、パスポートのコピー、写真2枚および申請料445ドルを添えて移民局に申請します。もし2年以上アメリカ国外での滞在が必要な場合は、2年以内にアメリカに戻り、滞在期間中に、再度、Re-entry Permit を申請することになります。2度目の申請までは、2年の Re-entry Permit を取得することができますが、3度目以降の申請では、1年ごとの期間のみが許可されます。そして3度目以降の申請では、アメリカに戻る意志を放棄していないことを示す特別な理由が無い限り、許可を得ることは困難になります。申請回数が増えれば増えるほど、許可を得るのは困難になります。ここで言う特別な理由としては、例えば、アメリカの会社より、海外の支店に駐在するなどが挙げられ、このような場合には、その会社からの手紙を添えて申請書を提出するのが望ましいと考えられます。

Re-entry Permit 申請に際して不便となるのが、申請後、アメリカ国内でフィンガープリントを取らなければならないことです。一回の申請ならば、余裕をもって(フィンガープリント採取は、申請から約6週間後です)申請すれば良いのですが、2回目以上になると、その度にフィンガープリントをアメリカで取るため、そのために申請時と、その後のフィンガープリント採取時の両方にアメリカに滞在しなければなりません。例えば、あなたのように東南アジアで勤務しなければならないような場合には非常に不便を生じることになります。

もしあなたが、2年後そしてそのまた2年後に、毎年アメリカに来て申請およびフィンガープリントを取ることが困難であると思われる場合には、アメリカ市民権の申請を行うことが賢明かもしれません。アメリカ市民権を取得するには、永住権を取得してから4年9ヵ月を経過していれば申請の開始が可能です。あなたの場合、今申請を開始すれば、春までには少なくともフィンガープリントまで終えることができますので、その後、面接および宣誓式の時にアメリカに戻ってくれば、アメリカ市民権の取得が可能です。また両親が市民権を取得すれば、18歳未満の子供は自動的に市民権を取得できることになります。

しかしここで気をつけて頂きたいことは、Re-entry Permit を取得した後、アメリカを2年間離れ、その後アメリカ市民権を申請することはできないということです。なぜなら、市民申請の条件として、過去5年間の間に連続して180日以上国外に出ていないこと、および5年間の内合計で半分以上はアメリカ国内で滞在しないといけないことが規定されているからです。従って、今の時点で、Re-entry Permit を申請し続けることによってグリーンカードを保持するのか、あるいはアメリカ市民権を申請するのかを決めないといけないということです。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

2016年 4月 4日更新

今回の記事はいかがでしたか?
トピックとして書いてほしいご質問やリクエストを受け付けております。以下に直接ご連絡を頂ければ幸いです。

taki@takilawoffice.com

Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

Newport Beach Office .. 1300 Quail Street, Suite 107, Newport Beach, CA 92660
Torrance Office .. 21221 S. Western Ave. Suite 215, Torrance, CA 90501
Los Angeles Office .. 3435 Wilshire Blvd. Suite 650, Los Angles, CA 90010

バックナンバー

BACK ISSUES
アメリカ移民法・ビザ申請の基礎
最新コラム
バックナンバー