コラム

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2019年11月 20日更新

第53回 : グリーンカードスポンサーの収入が基準を満たしていない場合はどうなるの?

Q

先月、私はアメリカ市民と結婚しました。グリーンカードの申請をしようとしましたが、グリーンカードのスポンサーになるには、ある程度の収入が必要であると聞きました。私の夫には十分な収入がありません。彼は、スポンサーになれないのでしょうか?また、申請中は国外に出られないと聞いたのですが、本当ですか?

A

本件のように、スポンサーとなる配偶者に十分な収入がない場合は、まず、あなた、あるいはあなたのご主人にそれを補う財産があるかどうかの判断を、最初に行う必要があると思います。あなたとあなたのご主人に、子どもなど扶養家族がいない場合、家族の数は2人となるので、必要とされる年収は、2万1,137ドルです。そして、ご主人の収入との差額の5倍の財産があれば、申請を行うことができます。例えば、あなたのご主人の収入が1万ドルだとすれば、差額は、2万1,137ドル-1万ドル=1万1,137ドルなので、1万1,137ドル×5=5万5,685ドルの財産があれば良いことになります。これは、銀行口座にある現金や不動産の額を提示することにより可能です。ただし、現金の場合は、銀行口座に過去1年以上保持していたことを証明する必要があります。この場合は、過去1年間の銀行明細書(Bank Statement)を提出することになります。不動産の場合は、不動産の現在の価値からローンの額を引いた差額がこの対象となります。不動産の現在の価値を示す書類は、例えば、郡(County)から送られてくる固定資産税の見積書等になります。ローン額に関しては、銀行などのローン会社から送られてくる明細書(Statement)にあるローンの残高がその額になります。また、現金と不動産の価値を併せて計算することもできます。

もし、上記の方法で条件額に満たない場合は、ご主人以外に「Affidavit of Support」にサインしてくれる連帯保証人(Joint Sponsor)を見つけることによって申請が可能になります。「Affidavit of Support」は、書式ではI-864と呼ばれ、これは、アメリカに移住してくる外国人がアメリカの公共の福祉に頼らなくても生活ができるように、グリーンカードを申請するスポンサー(あなたの場合ご主人および連帯保証人)がその生活を保証できるということを証明する書類です。あなたのように家族申請をする場合は、このI-864という書類を提出する必要があります。

移民申請を外国人のために移民局に提出する人、つまりスポンサーがこの「Affidabit of Support」を記入するわけですが、この連帯保証人になるには、申請者と血縁関係にある必要はなく、アメリカ市民かグリーンカード保持者であれば良いとされています。スポンサーは、申請者である外国人が公共の福祉に頼った場合に、その額を国に返済する義務があり、その義務は、その外国人が永住権を取得して市民権を取得するまで、あるいは、40クォーター(1年は4クォーター)間にわたりソーシャルセキュリティーを支払うこと、また、その人が永久的にアメリカを去るか死亡するまで続きます。

また、連帯保証人の年間の収入条件についてですが、スポンサーになる人の収入は国が定めている貧困レベルの125%以上でなければなりません(アメリカ軍人として働いている人は100%)。現在、カリフォルニア州の貧困レベルの125%の額は、スポンサーと移住する外国人だけの場合は、上述のように2万1,137ドル、扶養家族などが1人増えるにつき、5,525ドルずつ増えていきます。例えば連帯保証人が夫婦で同居していて子供が1人いたとすると、3(連帯保証人の家族の数)+2(あなたの家族の数)=5になり、その金額は3万7,712ドルとなります。

そして、申請中は国外に出られないかどうかという質問に対してですが、永住権申請中でも、国外に出ることは可能です。ただし、国外に出るためには一時出国許可(Advance Parole)が必要となります。この一時出国許可を取得するためには、永住権申請時にアメリカでの合法的な滞在資格があったことを証明しなければなりません。もし申請時に不法滞在であれば、一時出国許可は申請できませんし、仮に申請して発行されたとしても、再入国の際に問題になります。

申請方法は、永住権を申請した移民局にI-131というフォームと必要書類を提出します。一時渡航許可は、申請後約半年ほどで認可されます。その後、約3カ月から半年ほどでインタビューになります。また、この一時渡航許可を用いて再入国する場合は、(特に問題があるわけではなく、システム上の理由で)別室にて2時間ほど待たされる可能性が大きいので、その心づもりをされておかれた方が良いと思います。一般的には、この一時渡航許可は、最初にグリーンカードの申請と同時に行うのが一般的であり、また、お勧めする方法です。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

2019年11月 20日更新

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

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