コラム

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2021年 2月 1日更新

第68回 : 今年から、H-1Bビザの選択方法が「抽選」→「給与額優先」に変更!

Q

現在、私はOPTを利用してIT関連の会社に勤めていますが、夏に期限が切れてしまうのでH-1Bビザの申請を考えています。今年から制度が変わるという話を聞きましたが、私は申請できるのでしょうか?

A

移民局は、アメリカ人労働者を守ることを目的として、昨年まで行われていた抽選で申請者を選択する方法を変更し、「給与額により優先順位を設ける選択方法」を取り入れ、高度な技術を保持する申請者を選択対象とする方針を発表しました。これは、雇用主が人件費削減のため、「H-1Bビザ」を利用してエントリーレベルの従業員を雇うことを防ぐため、また抽選による選択方法では、雇用主側が将来の雇用に関する計画を立てづらいことを避けるためとされています。この方針は、2020年11月2日にガイドラインの発表を行っていましたが、その後各所からの意見を集め最終決定を行うに至りました。

「H-1Bビザ」は専門職ビザと言われるもので、その申請を行うには、1)申請者が4年制大学を卒業しているかそれに相当する職務経験があること、2)当該行われる職務内容が4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験がないとできないほど複雑かつ専門的であること、3)4年制大学、あるいはそれに相当する職務経験で学んだことを生かすことができる職務である、といった条件があります。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的そして実質的な適用・応用が要求される職種です。例を挙げると、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野で、その職種に就くにはアメリカにおいて通常、学士号あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要な職種とされています。

上述の「給与額により優先される」とは、労働局が公表している OES (Occupational Employment Statistics)上で、当該申請する役職の給与のレベル(4つのレベルに分類されています)の高い申請者が優遇されるということです。あなたの場合は、IT関係の会社に勤めているため、例えば、コンピューター・エンジニアなどの職種であれば、そもそも職種自体が比較的給与の高いカテゴリーに属していて、その中でレベルの高い給与だとするとさらに高くなります。例えば、コンピューター・プログラマーは、ロサンゼルス郡の場合、レベル1で年間6万5499ドル、レベル2で8万662ドル、レベル3で9万5805ドル、レベル4だと年間11万968ドルです。ただし、ここで注意しなければならないことは、労働局が規定している高いレベル(例えば上記のレベル4など)の給与(Prevailing Wage と呼ばれます)をあなたの雇用主が支払えるのかどうかを事前に確認しておく必要があるということです。もし、当該規定された給与(Prevailing Wage)が支払われていない場合、Site Inspection のリスクが生じます。Site Inspection とは、移民局(あるいは移民局と契約している調査機関)の調査員が予告なしに職場を訪れ、申請書に記載された通りの職務内容を行っているかどうか、また既定の給与額の支払いが行われているかどうかの確認が行われます。実際には、この時にPayroll Record の提出が求められることが多いです。

なお、この変更は、2021年3月9日に施行されるとされています。おそらく、事前に詳細な申請方法が発表されると考えられますが、大統領の政権交代により、場合によっては大幅な変更が加えられる可能性も十分にあります。この新しい「H-1Bビザ」の選択方法は、トランプ政権によって発案されたものであり、ご存知のようにトランプ政権は、移民に対して規制的な態度を取ってきました。一方、バイデン大統領の政権下では、移民を緩和する方向性を打ち出しているようです。

あなたの場合、アップデートされた情報を入手すると共に、雇用主である会社と給与額などの確認を行っておくことが重要です。また、読者の皆さんの中には、エントリーレベルでの申請を考えておられる方も多いかと思います。その場合も諦めるのではなく、アップデートされた情報を入手するよう努めると同時に、ほかのビザステータスなどの申請手段も考慮することが得策だと思います。

このコラムは2021年1月25日時点での情報を基に執筆したものです。この後、内容が大きく変わる可能性も十分にあることをご了承ください。詳細は専門弁護士に相談することをお勧めします。

2021年 2月 1日更新

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

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