Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2017/ 1/ 3

Vol.19 : アメリカで研修。H-3ビザについて知りたい!

Q

現在私は、日本の会社でインテリアデザインの仕事をしていますが、いずれアメリカで2~3年ほど仕事をしたいと思っています。しかし私は大学を卒業していないので、H-1Bを申請する資格はなく、かと言ってJ-1の1年半では少し短すぎます。そこでH-3ビザというのがあるというのを聞きましたが、このビザへの申請は可能なのでしょうか。また仮にJ-1を使った後、さらにH-3を申請することもできますか。

A

H-3ビザは、アメリカでの研修を目的としたビザです。申請は、アメリカの雇用主によって移民局を通して行われます。このH-3ビザは、H-1Bビザ(専門職ビザ)のように、学士号あるいはそれと同等の経験を保持しているということを証明する必要はありません。ただしH-3ビザの申請において雇用主は次のことを証明しなければなりません。

雇用主が証明しなければならない事項
  1. その研修が、母国では得られないということ(言い換えると、日本にない技術の修得であること)。
  2. 研修後、研修を受けた者にとって、アメリカで受けた研修が、アメリカ以外の国においてその職種を遂行するのに役立つものであること。
  3. 研修生を雇うことが、アメリカ人労働者に取って代わるものではないこと。
  4. その研修は、あくまでも研修生をトレーニングするものであり、生産性を伴うものではないということ。

また、その研修プログラムは、すでに確立されたものであるということを示す必要があり、内容としては、研修の構成、詳細、研修期間、報酬、そして、なぜその研修は母国ではなくアメリカで行われなければならないかということを明確にする必要があります。例えば、建築に関して、ハンディキャップの人のためのスロープやエレベーターのデザインなどが、日本における建築物に見られず、従って日本では学ぶことのできない内容を修了するプログラムが典型として挙げられます。

しかし移民局によって、研修を受ける者が、すでにその研修分野において、充分な知識を有していると判断された、もしくは研修で身に付けたことがアメリカ国外においては不必要であると判断された、または雇用主が、研修後にその研修生をアメリカで雇う目的で研修を行うと判断された、そしてその研修が単に、アメリカでの滞在期間を延長する目的であると判断された場合等は、H-3ビザの申請が却下されてしまいます。

H-3ビザ申請時における移民局の確認事項

具体的には、以下の内容を移民局に事細かに問われることがしばしばあります

  1. トレーニングの種類、およびどのような形で監督が行われるのか、またはトレーニング・プログラムの構成。
  2. 上記のトレーニング・プログラムの時間配分、および生産性のある就労に従事する時間。
  3. クラスルームにおいて、トレーニングを受ける具体的な時間数と、および実際の職場においてトレーニングを受ける具体的な時間数。
  4. 当該トレーニングを受けるに当たって、母国で準備してきた内容。
  5. トレーニングが母国で受けられない理由、および当該トレーニングをアメリカで受けなければならない理由。
  6. トレーニングを受けるものが受ける報酬、および会社がトレーニングを行うことによって受ける利益の説明。
H-3ビザの申請が却下されるトレーニングの内容

またトレーニングの内容が以下のような場合は、申請却下の対象となります。

  1. トレーニングのスケジュールが一般的であり、目的および評価の手段が備えられていないもの。
  2. トレーニングを行う会社と関連性の薄いトレーニング内容。
  3. トレーニングを受けるものが、既に修得されているであろう技術のためのトレーニング。
  4. トレーニングの内容が、将来的にその会社における雇用を考えているであろうと考えられるもの。
  5. トレーニングを行うに充分な施設、監督者等がないような場合。
  6. プラクティカルトレーニングの期間を延ばすために行われているであろうもの。

H-3ビザは、最高2年まで取得することができ、またH-3保持者の配偶者および21歳未満の子供は、H-4ビザを取得しアメリカに滞在することができます。

まず、H-3の申請は、以前に比べて極めて厳しくなっていますので、申請するか否かを決める際に、その条件をよく吟味する必要があります。

あなたの場合、最も重要なことは、スポンサーとなる会社でのトレーニングの内容が、日本では学ぶことができないものであるということを証明することです。例えば、OPTやJ-1終了後にさらに、H-3を申請しようとした場合、なぜさらにトレーニングを必要とするかの明確な理由を要求される可能性が非常に高く、また厳しい審査の対象となる可能性があります。従って、いずれの場合であってもトレーニングの内容を上記の条件と照らし合わせて、よく吟味し申請されることをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2017/ 1/ 3

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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