コラム

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2020年 9月 8日更新

第63回 : グリーンカードの新料金が上がる?10月より移民局申請料金改定!

Q

グリーンカードを取得して5年が経過したので、アメリカ市民権の申請を考えています。来月から申請費用が変更になると聞いたのですが、具体的な料金を教えてください。

A

移民局は、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を受け、政府からの充分な予算が下りず、この状態が続くと経営困難になることを理由に、2020年10月2日からの申請料金改正の発表を行いました。これにより、ほとんどの種類の申請書の料金は値上げされますが、申請書の種類によっては(比較的わずかではありますが)値下げされるものもあります。

例えば、グリーンカードの更新や再発行は、455ドルから415ドルになります。また、今回からオンラインでの申請の場合は、405ドルとわずかに10ドル安価になります。また、雇用を通してグリーンカードの申請を行う場合の、主に会社の審査の申請(I-140)も、700ドルから555ドルに値下げされることになります。

ただ、やはりほとんどの申請は値上がりすることになり、H-1Bの申請では、460ドルから555ドルに、O-1の申請では、460ドルから705ドルに、そしてL-1の申請では、460ドルから805ドルになります。なお、グリーンカードの申請における個人の審査(I-485)は、1,225ドルから1,130ドルにわずかに値下げされますが、実際には、今まで、申請費用を必要としていなかった(I-485の申請料金に含まれていた)就労許可の申請(I-765)に550ドル、また、一時渡航許可の申請(I-131)に590ドルを支払わなければならなくなります。I-485 を申請する場合は、ほとんどのケースが、就労許可(I-765)と一時渡航許可(I-131)も同時に申請するため、申請費用自体は、1,225ドルから 2,335ドルと2倍近くになってしまうことになります。この I-485 は、雇用を通す場合も、家族を通す場合も、その他グリーンカードの抽選なども含め、アメリカ国内において申請する際は、全てのケースに用いられる申請書式です。

ちなみに、あなたの場合、市民権の申請(N-400)は、725ドルから1,170ドルと大幅に値上げされることになります。あなたのように、市民権申請で、比較的シンプルなケースの場合は、一般的には、この値段が上がる前に申請するのが賢明と言えます。ただし、申請の種類・目的・内容によっては充分な準備を行った上で、慎重に行った方が良い場合もあります。準備が不十分な場合は、移民局から申請書を差し戻され、その間に時間が経過し、結局、値上げされた料金を支払わなければならなくなったり、あるいは、充分な証拠書類を提出していなかったために、追加資料の請求(Request for Additional Evidence)がされたり、場合によっては、Intenet to Deny を受けてしまう場合もあり得ます。この Intent to Deny とは、通知が発行されてから30日以内(パンデミックの間は60日間の猶予が与えられています)に、移民局に資料等を提出しなければ却下されてしまうという内容のものです。

つまり、最初に充分な資料を準備して申請していれば、Request for Additonal Evidence や Intent to Deny を回避できたかもしれないのに、最初の申請で十分な資料を準備しないまま申請を行ったために、これらの通知を受け取る結果になり、申請自体が却下されてしまったということにつながると本末転倒です。例えば、あなたのように市民権申請の場合であっても、稀な例ではありますが、過去3カ月以内に、州をまたいで引っ越しを行ったような場合は、引っ越してから3カ月間待たないと申請することができません。慌てて申請を行ったがために、このような事実確認を怠ってしまうと、却下につながってしまう可能性があります。この場合は、却下されるのが、手続き期間の約1年後になることも十分に考えられ、そこからまた再申請を行わなければならなくなってしまいます。

移民局への申請は、多くの場合、就労・滞在ができるかどうかを左右する非常に大事な申請を行うため、単に料金が上がるからという理由だけで、慌てて申請するのが必ずしも正解とは言えません。場合によっては、必要な時間を掛けて条件などの確認を行い、充分な準備を行って、確実に認可を得ることを狙うのも重要であると言えます。

また、資料が充分に揃っているか否かの判断だけではなく、料金の変わり目に申請書類を郵送するのもリスクになる可能性があります。つまり、10月2日のきわどい時期に申請を行うと、申請料金が違っていることを理由に移民局が差し戻す可能性があります。また、料金の変わり目では、多くの申請書が提出される傾向があるため、移民局が差し戻すのにも多大の日数を費やす可能性も高いです。一旦差し戻されると、再申請を行う必要がありますが、その間にステータスが切れてしまっていることも考えられます。従って、10月2日まであまり時間がない場合は、敢えて、10月2日以降に充分な資料を揃えてから申請するのが賢明でしょう。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

2020年 9月 8日更新

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

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