Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2018/ 9/ 26

Vol.39 : アメリカで起業家としてビザを取得するには?

Q

私は、日本で起業家として活動をしています。某大手新聞社に取材を受けたこともありますし、最近ではゲスト講師として、世界中の大学でレクチャーを行っています。アメリカ国内でもビジネスを始めたいのですが、私のビジネスには従業員を必要としません。投資や貿易以外の就労ビザは取得可能でしょうか?

A

アメリカで起業家としてビザを取得するには、一般的に企業内転勤者ビザ(L-1)や通商条約貿易駐在員ビザ(E-1)、そして通商条約投資家駐在員ビザ(E-2)が挙げられます。しかし、もう一つ考えられるのがO-1ビザです。

O-1ビザは、科学、芸術、教育、事業、スポーツにおける卓越した能力の持ち主、または映画やテレビ製作における卓越した業績を挙げたビザ申請者が、アメリカ国内で特定のイベント(一般的な就労業務も含む)で業務を行うことが許可されるビザです。業務が無報酬のものであっても、O-1ビザは必要となります。長期の滞在が予想されるイベントによっては、最長で3年間のビザが取得できます。その後、業務内容を継続するために、O-1ビザの有効期限を1~3年ごとに延長することが可能です。

注意点としては、O-1ビザ申請者は自身をサポートして申請することができないため、スポンサーとなる会社が必要なことです。従って、O-1ビザを申請するには、アメリカでのビジネスをサポートする法人エージェントとの契約することになります。このエージェントの条件は、①IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)に雇用主として登録されていること、②O-1ビザ申請者の滞在活動をある程度管理することをビザ申請者と契約していること、③O-1ビザ申請者の意思に反して契約が解除された場合は、当該ビザ申請者が無難なく帰国できるように航空チケットを購入することを約束していることです。

O-1ビザは、以下の2つのカテゴリーに分けられます。

【O-1Aビザ】

科学、教育、事業、スポーツにおける卓越した能力の持ち主として活動を行うために取得できる。

【O-1Bビザ】

芸術、または映画やテレビ製作活動を行うために取得できる。

あなたの場合は、O-1Aビザが適切でしょう。起業家としてO-1Aビザを取得するには、ビザ申請者が「当該業界の中でも類を見ない権威の持ち主である」ことを証明しなければなりません。このビザの取得には、アカデミー賞やグラミー賞、エミー賞などの権威のある賞の受賞か、ノミネートの経験あるいはそれらに匹敵する賞を取得した経験がない限りは、次の8つのカテゴリーのうち、少なくとも3つを満たす必要があります。

  1. 当該分野において、国内外で認知された賞の受賞経験がある。
  2. 当該分野の権威による審査が入会条件の団体の会員である。
  3. 専門雑誌、新聞や著名なメディア媒体で、申請者が当該分野で取り上げられたことがある。
  4. 当該分野において、特有「Original」な科学的、学問的、もしくはビジネス面での功績が挙げられる。
  5. 学術論文を専門雑誌やそれに匹敵するメディアに出稿している。
  6. 他同業者以上に高い収入を得ていることを、契約書や確定申告などで立証できる。
  7. 当該分野や関連分野において、審査員を務めたことがある。
  8. 極めて知名度が高い団体で重要な(あるいは)必要不可欠な役職に就いている(また就いていた)。

つまりあなたが起業家としてO-1Aビザを取得するためには、まず日本で(できればアメリカやその他の国においても)残した業績を示す物を、前記のリストに従って集めることです。さらに、あなたとあなたの業績を取り上げた新聞や専門雑誌の記事や、同業者や著名な評論家(教授)などの権威のある人からの推薦状の依頼も検討しましょう。

O-1Aビザ申請のプロセスは、3段階に分かれます。O-1ビザ申請者は、移民局に申請願書を提出する前に、当該分野の専門団体(あるいは、当該分野の権威) による審査を受け、O-1ビザ資格者であることを認められる必要があります。専門団体から認定を得た後、移民局の申請に掛かる期間は特急費用(1,410ドル)を支払うと、約1カ月で在日米国領事でのビザ面接を受けることが可能になります。ビザ面接を無事通過すれば、2週間ほどでアメリカでの業務が開始できます。

O-1Aビザを申請する上で一番重要なのは、個人ネットワークの質です。当該分野での権威であることを証明し、さらに当該分野におけるO-1Aビザ申請者以外の権威のある人・団体からの協力も要請しなければならないでしょう。当該分野ごとにも必要な情報や提出書類が異なりますので、O-1Aビザ申請においては、特に移民法弁護士とチームを組んで申請することをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。
今回のコラムニスト
Attorney大橋 幸生

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)を卒業後、アメリカ法学博士号(JD)を取得。アメリカ法全般における判例リサーチの経験をもとに、総合的な見地からの移民法のアドバイスを行う。

Updated on 2018/ 9/ 26

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taki@takilawoffice.com

Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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