专栏

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2022年 5月 3日更新

第83次 : 永住権取得中の海外出張。注意点や問題点は?

Q

現在、日系企業でE-2ビザを取得し働いています(ビザの期限2026年)。昨年、アメリカ市民と結婚してグリーンカードの申請を準備し、I-130とI-485の書類を同時に提出しようとしているところです。今所持しているI-94の期限が来年の1月なので、承認される前に出入国しなければならない可能性があり、その際の注意点をお伺いしたいです。また、仕事の出張で出入国をする場合はどのような準備が必要でしょうか。I-94の延長だけの場合は書類のみで出入国できると聞いているのですが、急きょ日本に帰ることもあり得ます。

A

まず、あなたの場合は、グリーンカードの申請をアメリカで行うのか、あるいは日本で行うかを選択する必要があります。それぞれの申請方法において、長所・短所がありますので、以下で説明します。

アメリカでグリーンカードを申請する場合は、あなたが言うとおりI-130とI-485の書類を同時に移民局に提出します。さらに、この2つの申請書に加えてI-765とI-131の書類も提出するのが一般的です。I-765は就労許可の申請で、I-131は一時渡航許可証(Advance Parole)の申請です。I-130 とI-485を提出後、約2~3カ月で指紋採取、その後、3~8カ月で面接となります。面接後、約1~2カ月でグリーンカードが郵送されてきます。

ここで、あなたの場合に問題となるのがI-765とI-131です。I-485を提出した後は、一時渡航許可が下りるまでアメリカ国外への渡航ができなくなってしまいます。パンデミック前までは、この一時渡航許可は、申請後約3カ月で認可が下りていたため、海外に渡航できない期間は約3カ月でした。しかしながら、このところ、この一時渡航許可の移民局での処理が著しく遅れていて、ほとんどのケースでは、一時渡航許可が認可される前にグリーンカードが認可されています(グリーンカードが認可された場合は、当然、一時渡航許可は必要ないため認可されません)。

従ってあなたの場合、この申請方法を選んだ場合には、6カ月~1年の間海外出張ができないことになってしまいます。また、手続きの進み具合によっては就労許可の問題も考えられます。この就労許可も、パンデミック前まではI-130と I-485の申請後、約3カ月で認可されていましたが、一時渡航許可と同じくほとんどのケースでグリーンカードが先に認可されています。

そこであなたの場合、現在所持しているI-94の有効期限が来年の1月なので、今から結婚の手続きを行い、その後I-130とI-485の申請を行ったとすると、万が一移民局での手続きが遅くなった場合は、来年の1月になっても就労許可もグリーンカードも無い状態が想定されます。そうなると、あなたのI-94の有効期限が切れた後、就労許可あるいはグリーンンカードのいずれかが届くまでの間、あなたはアメリカに合法的に滞在することはできますが、合法的に働けない期間ができてしまう可能性があります。I-94 はアメリカ国内でも更新が可能ですが、有効期限の切れる半年前までこの申請を行うことはできないので、本件の場合はあまり得策とは言えません。また、I-485申請後は、すでにグリーンカードの申請を開始しているので非移民ステータスである E-2ステータス(I-94)の更新を行うことはリスクを伴います。

一方、日本でグリーンカードの申請を行う場合は、最初にI-130のみを移民局に提出します。このI-130の申請が認可された後、あなたのケースはナショナル・ビザセンター(National Visa Center)にトランスファーされます。ここでDS-260の申請を行った後、ケースは日本のアメリカ大使館にトランスファーされ大使館で面接を受けることになります。この期間中は、あなたはE-2 ビザで自由にアメリカ国外への出入国を行うことできます。しかしながらこの手続きには1年半~2年強を要します。

ただ、この場合、1年半~2年強の期間の間、あなたはE-2 ビザを使ってアメリカから自由に出入国が出来るということ、また就労資格に先述のギャップが生じないというです。さらに、この手続きに2年以上(厳密には入籍してからグリーンカードが認可されるまでの間に2年以上)を要した場合は、前者の方法の場合では2年の条件付きグリーンカードを取得するのに対して、10年間有効な条件のないグリーンカードが取得できることになり、後に条件解除の手続きを行う手間が省けることになります。特にあなたの場合は、昨年に結婚しているので条件のないグリーンカードを取得できる可能性は高く、ナショナル・ビザセンターの段階で手続きを少し遅らせる方法も考えられます。

従って、あなたの場合は海外出張ができることを優先させるか、あるいはグリーンカードが早く取れることを優先させるかによって、上記の申請方法のいずれかを選択することになります。海外出張を優先させるのであれば後者の方法、グリーンカードが早く取得(ただし2年の条件付きグリーンカード)できることを優先させるのであれば前者の方法になります。

それぞれの申請方法の長所・短所をよく考慮し、あなたの今後のプランに見合った方法を選ぶことをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

2022年 5月 3日更新

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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