まるわかりハーグ条約

ハーグ条約は国境を越えた子どもの移動に関する条約です。多くの皆さんに正しく知ってもらえるようにコラムを執筆します。ぜひお読みください。(本コラムはロサンゼルスの事例を中心に紹介しています。)

2021年 2月 8日更新

よくある質問

今回のコラムでは、架空の事例を元に、当事者の方から寄せられる、よくある質問についてご紹介します。

日本人女性の花子さんは、留学中に米国人男性のジョンさんと出会い、米国で結婚しました。その後、花子さんとジョンさんの間に子どもが生まれ、3人は米国で生活していました。ところが、花子さんとジョンさんの間にケンカが増え、花子さんは日本への帰国を考えるようになりました。ある日、ジョンさんの出張中に花子さんは黙って子ども(5歳)を連れて日本に帰ってしまいました。ジョンさんは、花子さんからの「子どもは日本で育てます。」とのメールで子どもが日本に行ったことを初めて知りました。花子さんにメールをしても返事はありません。

ジョンさんは子どもを米国に取り戻すために、ハーグ条約に基づき子どもの返還援助を米国中央当局(国務省)に申請しました。その後、ジョンさんの申請書は日本中央当局に移送され、日本中央当局は審査の上、援助決定をしました。

Q...
花子さんにやむを得ない理由があったとしても、ハーグ条約が適用されますか?
A...

ハーグ条約が適用されるためには、①子どもの年齢が16歳未満、②移動する前にいた国と移動した先の国が条約の締約国、③残された親の監護の権利が侵害される形で子どもが国外に移動されたなどの条件があります。この事例の場合、①子どもは5歳、②日本と米国はハーグ条約の締約国、③ジョンさんは子どもが日本に行くことに同意していませんので、ハーグ条約の対象になります。ハーグ条約では、原則として、子どもを元いた国に返還することになります。やむを得ない理由が例外的な返還拒否の理由として認められるかは裁判所の判断になります。

Q...
花子さんとジョンさんが離婚をしていた場合はどうなりますか?
A...

父母が離婚していたとしても、ジョンさんが監護の権利を有している(共同親権など)にも拘わらず、その権利が侵害されている場合は、原則として米国に子どもを返還することになります。

Q...
ジョンさんが日本国籍だった場合はどうなりますか?
A...

ハーグ条約は、親子の国籍に拘わらず適用されます。ジョンさんが日本国籍であっても、子どもが国境を越えて移動したのであれば、ハーグ条約の対象となり、原則として米国に子どもを返還することになります。

Q...
子どもの外国返還援助が決まったら、直ぐに子どもを元いた国である米国に返さないといけないのですか?
A...

援助決定=返還決定ではありません。援助決定後、話し合い又は裁判を行うことになります。

Q...
援助決定された場合、花子さんとジョンさんはどのような支援を受けることができますか?
A...

日本中央当局の支援は花子さんとジョンさんの両方に提供されます。例えば、日本弁護士連合会を通した弁護士紹介、裁判外紛争解決手続(ADR)機関の紹介及び費用の免除(一定限度まで)、裁判所に提出する資料等の翻訳(一定限度まで)、面会交流支援機関の紹介及び費用の免除(一定限度まで)等を受けることが可能です。

Q...
日本ではリーガルエイドを受けられますか?
A...

弁護士費用等の貸付制度である民事法律扶助制度を利用することができます。民事法律扶助制度の詳細については、日本司法支援センター(通称:法テラス) をご覧ください。

Q...
花子さんとジョンさんだけでは話し合いができない状況の場合、どのように解決しますか?
A...

当事者間のみでの話し合いで解決することができない場合、①弁護士など第三者が間に入り、当事者同士が話し合いを進める裁判外紛争解決手続(ADR)機関を利用する、②子の返還裁判を申し立てる(子どもが日本に移動した場合、返還裁判は日本で行われます)などの方法をとることが考えられます。援助申請をした後に、外務省からADRや裁判手続のための弁護士紹介等を受けることができます。

Q...
裁判ではどのような判断がなされるのですか?
A...

子どもを米国に返還するか否かについて判断されます。子どもの親権などについては判断されません。

Q...
花子さんはどうすれば良かったのですか?
A...

黙って子どもを連れて日本に移動した場合、米国での刑罰の対象にもなり得ます。帰国を決断する前に、子どもの移動についてジョンさんの同意を得ておく、同意を得られない場合は裁判手続を利用してお子さんの移動や監護について整理しておくことが望ましいです。

Q...
子どもの移動やハーグ条約について相談したい場合は、どこに相談したらいいですか?
A...

ハーグ条約についてご不明なことがありましたら、外務省ハーグ条約室までご連絡ください。電話とメールでご質問を受け付けています(現在テレワークを併用しているため、メールの方が迅速にご回答できます)。

米国内の法的な手続については米国にいる弁護士に、日本で行われる返還裁判のことについて(子どもが外国から日本に連れて行かれた場合)は日本の弁護士にご相談ください。

また、Little Tokyo Service Centerでは日本語でのDV相談に応じています。電話番号は213-473-3035で月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで相談を受け付けています。(https://www.ltsc.org/

2021年 2月 8日更新

ハーグ条約について知りたい方は以下をご参照ください。

Information

広報班外務省ハーグ条約室(外務省ハーグ条約室)

日本では2014年4月1日にハーグ条約が発効しました。ハーグ条約では各締約国に中央当局の設置を義務づけており、日本では中央当局を外務大臣とし、その実務を外務省ハーグ条約室が担っています。

ハーグ条約室では、少しでも多くの方に正しくハーグ条約について理解してもらうべく、国内外で広報活動を行っています。

ハーグ条約について様々な角度から解説していきます。ご不明な点がありましたら、以下までお問い合わせください。

外務省ハーグ条約室

日本、〒100-8919 東京都千代田区霞が関2丁目2-1
TEL:
+81-3-5501-8466
EMAIL:
hagueconventionjapan@mofa.go.jp

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