ディレクター
Sumiyo Sumikawa モンテッソーリ国際学園 info@monteintel.org

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モンテッソーリの日常生活の練習とは?
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いまなぜモンテッソーリ教育なのか?

モンテッソーリ教育はイタリアのマリア.モンテッソーリがつくった100年以上続いている世界で一番広く取り入れられている幼児教育です。このコラムで皆様の子育てのお役に立てると嬉しいです。

Updated on 2012/12/ 13

Vol.7 : モンテッソーリの日常生活の練習とは?

今回は日常生活の練習についてお話いたします。 モンテッソーリ教育では、私たち大人が子ども達にどのように生きていくのかを見せてあげることが大切であると言っています。 生活の原点である衣食住の方法を具体的に示し紹介してあげるということです。 これがモンテッソーリ教育の日常生活の練習 (=Practical Life) という分野です。 これは生活する力をつけることのみを目的としたものではありません。 この活動は子ども達が成長する上で欠かせないプロセスなのです。 今回は、それを経て子ども達が得る重要な要素、協応動作、自立心、集中力の発達についても詳しくお話してみようと思います。

子ども達は、誕生から徐々に体のあらゆる部分を成長させ体を動かしながら自分で自分のことをしたり、生活に必要な動きを獲得していきます。 生まれたばかりの時は握ることしか出来なかった手が、物をつかんで移動させたり指を使い包んであるものを開いてみたりなど、細かな動きを獲得し、目的を達成するために動く体を作っていきます。 日常生活の練習とは、この動きをともなった成長のエネルギーに関係していく分野を言います。 この練習を行うことにより、「身体の動きの獲得」 と 「自己の完成」 を目的とした人格形成をしていくのです。

モンテッソーリが日常の生活に着目した背景には、「子ども達は他でもない日常生活で行う活動に強い興味を示す」 という事実からです。 モンテッソーリは科学的な観察によってより深く研究し、なぜ子ども達がこのように日常生活の活動に興味を持つのかを証明しました。 日常生活における活動は、子ども達に 「身体の動き方」 を身につけさせてくれる大切な役割を担っているからだとモンテッソーリは言います。 子どもは物を触ったり動かしながら自分の身体の動きを洗練していくのです。 そして、動きと共に子ども達の周りにあるものが何であるかの概念、関係性を学びます。 それが基礎となり、活動はより意識的に変わります。 例えば、「もっとこうしたらどうなるか?」 「今度はこれを動かすとどうなるか?」 などの疑問と共に活動に変化が現れはじめます。 無意識に動かしていたものが、今度は自分の意思でより目的をもった活動へと移っていきます。

この分野の具体的な活動は以下のような内容です。

  • 水をガラスのコップに注ぐ
  • 線がかかれた紙を切る
  • ハンカチを折りたたむ
  • ほうきで掃く
  • 金属で出来たものをピカピカに磨く

どのように食べるものを用意するか、どのように服を着るのか、どのように周りの環境を整えきれいな状態に保つのか、などを活動として用意し子ども達が自由にそれを練習していきます。

この活動の種類や内容は、子ども達を取り巻く社会環境の中から実生活で必要とされるものが選ばれ用意されます。 例えば、日本文化に馴染みのある生活には 「箸を使って物をつまむ」 ものが必要で、アメリカ文化で暮らす子ども達には 「テーブルセッティング」 などは洋式のものを用意するでしょう。 畑がある場合は、草むしりの方法なども含まれたりします。 普段大人が当たり前に生活で使っているものを用意します。 通常、それらの活動に使うものは大人が使う環境にあわせたものです。 大きさや使い勝手などはどれも子どもには適切ではありません。 モンテッソーリのお部屋にあるものは、すべて子ども用のサイズに変えられ、子ども達が主体となって活動できるように配慮しています。

活動していく中で、子ども達の中に更に深まっていくものがあります。

  • コーディネーション (協応動作)
  • 独立心、自立心
  • 集中力

モンテッソーリは次のように言っています。

Coordination, independent, and focus, which develop children to become more intelligent…
協応動作、自立心、集中力は子ども達をより知性的に発達させる要素である。 子ども達の活動がより知的になっていくうえでの大切な要素です。

目的意識をもって手を動かし作業をすることは単純な様ですが、実は大切なメカニズムが作動していることについてお話していきましょう。

動きをつかさどるのは、大脳、感覚器官、筋肉からなる脳を中心とする感覚・運動ネットワークです。 自分の意思により、このネットワークは脳、感覚器官、筋肉をセットで作動させながら動いて活動を達成していきます。 この3つが同時に作用しなければ、子ども達が求める動きは困難です。 例えば、コップの中に水を注ぐという目的も達成することが出来ません。 またこの脳を中心とする感覚・運動ネットワークがないと、子ども達が取り巻く環境にあるものと関わりその関係性を見つけるということも困難になります。 反対に、モチベーションを持ちながら目的をもった動きをたくさん行うとき、このネットワークを充分に働かせることができるのです。 その結果子どもたちの中で環境との関係性がより深まり、脳の発達も促されることでしょう。

モンテッソーリは 「動きは知性の命令から起こる」 と言っています。 子ども達に備わっている知性が子ども達の興味を呼び起こし、身体を動かしてそのものに関わろうとするのです。 自由に動き回りながら自分を完成させる子どもは、知的な目的を持っている子であり、その行動が知的なメカニズムを作動させるとモンテッソーリは言います。

ゆえに子どもの動きを見るとき、私たちは子ども達の知性の働きを観察することができます。 特に手の動きは注目される部分です。 手が私たちの活動の主となるからです。 手の運動発達の研究者は 「手の動きは知性の発達と関連する」 と述べています。 古来文明の発見において、より手を使ったとする作品がみれる文明は、より高い精神生活が垣間見れるといいます。 子ども達の手の発達は、子ども達が知性から課せられる 「ものと関わりなさい」 という課題を支援する大切な道具と言えます。

私たちは、子ども達のこのような活動を大切に守ってあげなくてはいけません。 子ども達は自分の家でこのような活動を充分にできるでしょうか? おそらく、ガラスのコップに触ろうとする幼い子ども達に 「危ない」 「きっと失敗して、水をこぼしてしまったり、ガラスのコップを割ってしまうから」 という理由で、止められてしまうでしょう。 しかしモンテッソーリのお部屋では、たとえ子どもが3歳でも、ガラスのコップを使って水を注いだりする活動を支援します。 もちろんこの活動にいたるまでには、教師の環境の準備と支援が欠かせません。 どのようにコップを持ち、どのように注ぐかをデモンストレーションをし、動きを分析してゆっくりゆっくり見せます。 子ども達の水を注ぐ活動を成功に導くために、子ども達が扱えるサイズのグラスを用意したり、こぼしたときの対処方法も見せます。

クラスを見学に来られた方々がよく口にするのは 「なぜここの子ども達はおりこうで静かなのですか?」 また、そうおっしゃる方の中には 「こんなに静かで静的なのは子どもらしくない」 と勘違いされる場合も多々あります。 しかし、本来子ども達が自由な環境の中でこのような活動の機会を与えられたら、どの子も安心し静的な面を表現するのは当然のことではないでしょうか?ですから、私たちモンテッソーリ教師にとってはごく当たり前の光景なのです。

目的意識なく走り回る動作より、身体のあらゆる部分を使い労力を費やす活動 (モンテッソーリではお仕事とよびます) の方が子どもたちにとって楽しいのです。 子どものやってみたいという興味に応答する環境を整えることで子どもの満足感が増していきどんどん静かに作業に集中し始めます。 モンテッソーリはこの現象を 「正常化」 という呼び方をしています。 子どもが間違った状態から正常になるのではなく、本来の子どもの姿が現れる瞬間だということです。

日常生活の練習をしながら (内からくる知性の命令に従っている) 正常化された子ども達の姿を見た時、一人の自己としての高い秩序が垣間見れるのは当然なことです。 さらに、動きが洗練されてきた子ども達が見せる自己に秘めた可能性の表現には目をみはるものがあります。

例えば、細やかな部分まで精巧なスポーツカーを描く子ども、未来の街を創造して作り上げる子どもの発想力、お母さんがびっくりしてしまうくらい上手に家族の洗濯物を畳みあげる子ども、自分の歌の才能に誇りをもち皆の前で堂々を熱唱する子ども、棚の上に置かれていた絵を立てかける額の仕組みを発見し、自分でも紙で型どり同じように作って部屋中に額を並べていく子ども… 毎日子ども達の発見は数え切れません。 どの子の才能も、洗練された動きを個々が獲得したからこそ起こるものです。 皆の前でパフォーマンスできるのもその源は精神的な自立から起こる子どもの自信です。

このように知性に導かれて自己を発見し、完成させていく様子を応援する教育がモンテッソーリです。

知性に導かれている子どもに必要なことは自由な環境です。 何度も練習できる機会が必要です。 もし水を注ぐことに失敗したとしても、子どもは大人の助けを求めてその活動をやめようとするでしょうか?きっと子どもは何度も何度も繰り返し水を注ぎながらうまく注げるようになるまで努力し続けることでしょう。 でもほとんどの場合 「あーあ、ほら言ったでしょ。」 と近くの大人が布巾などを差し出し中断されてしまうことが多いかと思います。 でも、もしそこで大人がどのようにしたら良いか見本を見せたり、子どもに継続の機会を与えたとき、子どもも一生懸命自分で目的を達成する努力をするはずです。 そして、そのように目的を達成するために導いてくれた協力的な大人をより信頼するようになるのではないでしょうか?

繰り返しますが、子ども達は知性の導きにより自己を完成させるために動いています。 大人の辛抱強い見守る力が必要なのです。

私たちは子ども達にどんどん動き練習してもらうために、彼らの知性の動きを邪魔せず、むしろ自由を与え、外界のものとの関連性を学ぶ子ども達を応援する人的な環境とならなくてはいけません。 子どもが人間としてしっかり生きていく為に、また社会を平和で愛にみちた世の中にすることを心がける社会の一員として育てるためにも、日常生活の練習はその原点となるものでしょう。

《参考文献》

『子どもの精神 -吸収する精神-』 マリアモンテッソーリ著 中村勇 訳

Updated on 2012/12/ 13

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Columnist's Profile

ディレクターSumiyo Sumikawa(モンテッソーリ国際学園)

公益財団日本モンテッソーリ綜合研究所研究員。モンテッソーリ国際資格取得コース (AMS認定) ディレクター。日本にてモンテッソーリ教師の資格を取得。幼稚園教諭として幼稚園に5年間勤務。その後、更にモンテッソーリを学ぶために渡米。American Montessori Society (AMS) 認定の幼児及び小学部の資格を取得し、Casa Montessori School にて3-6歳児のクラス担任として7年間勤務。2003年 University of California Los Angeles、で心理学学士号取得。行動療法士として自閉症児の支援をし、その活動の一環として、自閉症やその他の障害をもつ子どもたちにミュージカル“Cats”を指導。障害児とその兄弟姉妹たちで結成した“Miraclecats”のディレクターを務める。2009年College of St. Catherineにて教育学の修士号取得。現在は、サンタアナ市に英語と日本語のバイリンガル教育の幼稚園、モンテッソーリ国際学園主宰。

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