ディレクター
Sumiyo Sumikawa モンテッソーリ国際学園 info@monteintel.org

最新コラム

第46回 : update
子どもの成長を支える「環境」と「生活」 ~モンテッソーリ教育から考える幼児教育~

バックナンバー

第1回 : 
モンテッソーリー教育との出会い
第2回 : 
「ダメ」 と言っていることは本当に「ダメ」?「ダメ」と言う前に知っておきたいこと
第3回 : 
家庭でできるモンテッソーリ教育
第4回 : 
教師の心得
第5回 : 
環境
第6回 : 
モンテッソーリと障がい児教育について
第7回 : 
モンテッソーリの日常生活の練習とは?
第8回 : 
モンテッソーリの感覚教育とは?
第9回 : 
モンテッソーリの言語教育とは?
第10回 : 
モンテッソーリの算数教育
第11回 : 
モンテッソーリの文化教育
第12回 : 
モンテッソーリ教師への道
第13回 : 
モンテッソーリ教師への道 ~現役教師インタビュー Vol.1~
第14回 : 
モンテッソーリ教師への道 ~現役教師インタビュー Vol.2~
第15回 : 
モンテッソーリ教師への道 ~現役教師インタビュー Vol.3~
第16回 : 
モンテッソーリ教師への道 ~現役教師インタビュー Vol.4~
第17回 : 
モンテッソーリ教師への道 ~現役教師インタビュー Vol.5~
第18回 : 
もっと知りたい!モンテッソーリ教育 スペシャルインタビュー 前編
第19回 : 
もっと知りたい!モンテッソーリ教育 スペシャルインタビュー 後編
第20回 : 
もっと知りたい!モンテッソーリ教育 日本モンテッソーリ教育綜合研究所 実践研修室レポート
第21回 : 
もっと知りたい!モンテッソーリ教育 スクールエイジ・プログラムスタート!
第22回 : 
スぺシャルリポート 「スクールエイジ・プログラム 日本語学科・芸術学科」 オープンハウス開催
第23回 : 
モンテッソーリ教育「スクールエイジ・プログラム」コース紹介
第24回 : 
モンテッソーリ教育「スクールエイジ・プログラム」コース紹介2
第25回 : 
モンテッソーリ教育「スクールエイジ・プログラム」コース紹介3
第26回 : 
モンテッソーリ教師への道 ~現役教師インタビュー Vol.6~
第27回 : 
もっと知りたい!モンテッソーリ教育 「モンテッソーリ育成教師育成集中トレーニングコース」レポート
第28回 : 
もっと知りたい!モンテッソーリ教育 日本文化教育 ~扉の向こうは日本。アメリカで自分のルーツを学ぶ~
第29回 : 
日英バイリンガルを育てる「イマージョン・プログラム」
第30回 : 
「子育て中の親御さん必読!」モンテッソーリQ&A 教えて!炭川先生 Vol.1 「“魔の2歳児”が納得する効果的な叱り方とは?」
第31回 : 
MIA@HOME ~2歳から小3を対象としたオンライン授業開始!~
第32回 : 
祝・開村 ママのためのイベントネットワーク「MIA Village」① “一緒にハッピーなお母さんになりましょう!”
第33回 : 
ママのためのイベントネットワーク「MIA Village」② “ママが輝くプロジェクトが続々スタート!”
第34回 : 
MIA Village対談 オコーマ・素子さん(看護師・助産師・国際認定ラクテーションコンサルタント)
第35回 : 
もっと知りたい!モンテッソーリ国際学園 キンダーガーテン「5~6歳クラス」Q&A
第36回 : 
もっと知りたい!モンテッソーリ国際学園 小学部Q&A
第37回 : 
MIA Village対談:Miwako Cichonさん(ボランティア団体Nova Vita Foundation代表)
第38回 : 
新しい年度を前に ~ダイナミックでクリエイティブな時代を生きる子どもたちによりふさわしいプログラムを~
第39回 : 
しつけで悩んでいる方必読!子どもの自律を促す「ポジティブ・ディシプリン」のススメ
第40回 : 
「子育て中の親御さん必読!」モンテッソーリQ&A 教えて!炭川先生 Vol.2「2歳の子どもの大泣きが止まらない!」
第41回 : 
「幼児教育者必読!」 モンテッソーリQ&A 教えて!炭川先生 Vol.1「子どもが集団で話を聞けるようになるには」
第42回 : 
「子育て中の親御さん必読!」モンテッソーリQ&A 教えて!炭川先生 Vol.3「幼稚園児の成長を促す!長い休みのベストな過ごし方は?」
第43回 : 
「子育て中の親御さん必読!」モンテッソーリQ&A 教えて!炭川先生 Vol.4「幼稚園で床掃除?『日常生活の練習』ってなぜ必要なの?」~前編~
第44回 : 
「子育て中の親御さん必読!」モンテッソーリQ&A 教えて!炭川先生 Vol.5「秩序ある生活が子どもに与える栄養」~後編~
第45回 : 
子どもの成長を支える「環境」と「生活」 ~モンテッソーリ教育から考える幼児教育~
第46回 : 
子どもの成長を支える「環境」と「生活」 ~モンテッソーリ教育から考える幼児教育~

いまなぜモンテッソーリ教育なのか?

モンテッソーリ教育はイタリアのマリア.モンテッソーリがつくった100年以上続いている世界で一番広く取り入れられている幼児教育です。このコラムで皆様の子育てのお役に立てると嬉しいです。

2026年 9月 16日更新

第46回 : 子どもの成長を支える「環境」と「生活」 ~モンテッソーリ教育から考える幼児教育~

後編 子どもから、私たち大人も学ぶ―「普通の生活」にある学び

アメリカでモンテッソーリ幼稚園を運営する筆者が、日本への一時帰国を通して感じた幼児教育について、前後編の2回に分けてお届けします。「前編―『環境を変えれば、子どもは変わる』 日本の幼稚園で改めて感じたモンテッソーリ教育の力」はこちらで閲覧できます。

はじめに

日本とアメリカの両方で幼児教育に携わる中で、私が近年強く感じているのが、幼い頃の「生活」が、その人のその後の生き方に大きくつながっているということです。食事をする、片付ける、道具を使う、人に配慮するなど、一見すると当たり前の生活の一つ一つに、実は多くの学びがあります。そして子どもを育てることは、子どもだけを変えることではありません。親自身、私たち大人が自分の価値観や育ってきた環境を見つめ直すことも必要です。今回は、幼児期の生活体験の大切さと、子どもたちの成長を見守る中で感じることについてお話しようと思います。

暮らしの中で身に付く、人生の土台

大人になった人を見ていると、その人が小さい頃にどんな生活をしてきたのかが、意外なほど表れることがあります。もちろん、学校で何を勉強したかも大切です。脳を鍛え、さまざまな知識を身に付けることも必要です。でも、それと同じくらい、「普通の生活をきちんとする」ということが、その後の人生に大きな意味を持つのではないかと思っています。

以前、70代の方から「家の裏で畑をやっていて、いろいろな野菜を育てている」という話を聞いたことがあります。野菜を育てるというのは、実は簡単なことではありません。1年を通して何をいつ植えるのか。土をどう準備するのか。どの時期に何を手入れするのか。そこには、順序や秩序、計画性が必要です。

もちろん、親がやっているのを見て覚えたり、近所の人がやっているのを見たりすることもあるでしょう。でも、私はそれだけではなく、子どもの頃から実際に生活の中で「自分で動いて、やってみる」という経験を積むことが大切なのだと思っています。例えば、誰かが髪を切ろうとしているとき、そこに物が置いてあったら、「邪魔だな」と思って、さっとどかす。人が何かをしようとしていたら、必要なものを渡す。人に物を譲る。相手が困らないように、少し先回りして何かをする。

こうしたことは、教科書で学ぶものではありません。自分自身が生活の中で、「こうしたら相手が助かる」「こうすると邪魔にならない」という経験をしているからこそ、人に対しても自然に配慮できるようになるのだと思います。

そして、こうした経験は、やはり実際に動いて生活する中でしか身に付きません。洗濯をする。シーツを替える。季節に合わせて必要なことをする。食事の準備をする。テーブルに食器を並べる。一つ一つは、ごく普通のことです。でも、私たちが長い間、習慣としてやってきた「普通の生活」の中には、実は非常にたくさんの学びがあります。順序を考える。手順を覚える。時間を意識する。道具を正しく使う。人の動きを考える。そして、自分の役割を果たす。そういう経験の積み重ねが、自分で目標を立て、それを達成していくための土台にもなるのではないでしょうか。

自由を尊重しながら、必要なことを伝える

今の子育てでは、「子どもの自由にさせる」「やりたいことを思い切りやらせる」という考え方が大切にされています。私は、それ自体はとても良いことだと思います。子どもの心を抑えつけないこと。大人になってから自分らしく生きられるようにすること。それは大切です。でも、「自由にさせる」ということと、「何も教えない」ということは違います。小さな子どもは、まだ世の中のことを知りません。言葉一つをとっても、その意味を知らなければ人と十分にコミュニケーションを取ることはできません。

だからこそ、幼い時期に大人が丁寧に教え、伝えることが必要なのだと思います。何をどう使うのか。どうすれば人と気持ちよく過ごせるのか。生活の中で何をどうすればいいのか。そうしたことを一つ一つ伝えていく。それができるのは、やはり子どもが小さい時期だからこそなのだと思います。

もう一つ、私が大切だと思っているのは、周囲に流されないことです。「あの子がやっているから、うちの子もやらせなきゃ」「みんながこうしているから、うちもこうしなきゃ」。そうなってしまうと、いつの間にか「自分の子どもを見る」という一番大切なことを忘れてしまうことがあります。その子は、他の子とは違います。だからこそ、その子をしっかり見る。何に興味を持っているのか。何を必要としているのか。どんなところで困っているのか。今、その子にとって何が大切なのか。そこに時間を使うことが大切なのだと思います。

子どもたちから、私も学んでいます

そして最近、私が幸せを感じるのは、MIAを卒業して成長した子どもたちから、今度は私が教えてもらえることです。

子どもたちは卒業すると、それぞれが自分の「好き」を見つけ、それを大切に育てていきます。そして、気が付けば、その「好き」が、人に教えられるほどの素晴らしい力や才能になっている。そんな卒業生たちに、今度は私が教えてもらったり、助けてもらったり、力を貸してもらったりすることが、最近の私の大きな喜びです。

先日も、10年生になった卒業生から、うれしい報告が届きました。ソーシャルダンスの世界で活躍しているその子が、ワールドチャンピオンシップで二つのカテゴリーで2位と3位に入賞したというのです。本当に素晴らしいことです。そして今度は、その子が私にダンスを教えてくれることになりました。なんて素敵なことでしょう。

私たち大人は、子どもたちに何を教えるかを考えることが多いものです。でも、子どもに向き合う全ての大人が忘れてはいけないことの一つは、子どもたちは成長の過程で、いつか私たちの想像を超えていく存在だということです。

大人がいつも「教える側」で、子どもがいつも「教わる側」なのではありません。子どもたちの中にある「好き」や可能性を大切にし、それが育っていく時間を見守る。そしていつの日か、成長した彼らから私たちが教えてもらう。それもまた、教育の素晴らしい喜びの一つなのだと思います。

朝ごはんを食べることも、教育である

今回、日本の幼稚園を訪ねて、環境を整えることの大切さを改めて感じました(詳細は前編をご覧ください)。そして、その経験から考えていくと、教育は幼稚園の中だけにあるものではないということにも気付きます。

例えば、朝ごはんを食べる。これも教育の一部です。最近は、忙しい毎日の中で、朝ごはんを食べずに登園する子どももいます。親も仕事や家事で忙しい。朝から子どもを起こして、準備をさせて、送り出すだけで精いっぱい。「何を食べさせたらいいのか分からない」「ちゃんとしたものを作らなければ」。そう考えすぎて、かえって何もできなくなってしまうこともあるかもしれません。

でも、私はもっとシンプルに考えてもいいのではないかと思っています。生活をすることそのものが、子どもにとって大切な学びだからです。そして、子どもが食べていないということは、もしかしたら大人自身も食べていないのかもしれません。子どもの生活を整えることは、自分自身の生活を見直すことでもあります。

「今からでもできる」ことがある

幼児教育について考えるとき、どうしても「良い教育を受けさせなければ」と考えてしまいがちです。でも、今回の日本での経験を通して、私はもっと身近なところに教育があることを改めて感じました。高価な教材がなくてもいい。特別な場所がなくてもいい。まず、家の中を少し整えてみる。子どもが自分でできることを増やしてみる。一緒に生活する。そして、子どもをよく見る。それだけでも、始められることはたくさんあります。

子どもには、自分で成長していく力があります。大人の役割は、その力を無理に引っ張り出すことではなく、その力が自然に出てくるような環境を整えることなのだと思います。

そして、子どもたちが成長したとき、今度は私たち大人がそこから学ぶこともできます。生涯学習というと、「いくつになっても新しいことを学び続けること」と言われます。私にとってのこれからの生涯学習には、かつて私たちが育てた子どもたちから、今度は私が何を教えてもらえるのか、という喜びも加わりました。

次は誰が、何を私に教えてくれるのでしょう。今からとても楽しみです。

2016年度卒業生の清美さんからダンスのレッスンを受ける炭川純代さん

ソーシャルダンスのワールドチャンピオンシップで2位に入賞した清美さん(右から4人目)

2026年 9月 16日更新

Columnist's Profile

ディレクターSumiyo Sumikawa(モンテッソーリ国際学園)

公益財団日本モンテッソーリ綜合研究所研究員。モンテッソーリ国際資格取得コース (AMS認定) ディレクター。日本にてモンテッソーリ教師の資格を取得。幼稚園教諭として幼稚園に5年間勤務。その後、更にモンテッソーリを学ぶために渡米。American Montessori Society (AMS) 認定の幼児及び小学部の資格を取得し、Casa Montessori School にて3-6歳児のクラス担任として7年間勤務。2003年 University of California Los Angeles、で心理学学士号取得。行動療法士として自閉症児の支援をし、その活動の一環として、自閉症やその他の障害をもつ子どもたちにミュージカル“Cats”を指導。障害児とその兄弟姉妹たちで結成した“Miraclecats”のディレクターを務める。2009年College of St. Catherineにて教育学の修士号取得。現在は、サンタアナ市に英語と日本語のバイリンガル教育の幼稚園、モンテッソーリ国際学園主宰。

バックナンバー

BACK ISSUES