米国公認会計士による、わかりやすい!会計・税金101

アメリカの生活ではつきものの、お金の話、会計や税金にまつわる基本情報や知っていると役に立つトピックスを選んでお届けします。

2022年 6月 6日更新

第4回 : アメリカ国外の贈与や銀行口座は申告を忘れずに!「FBAR」について

今回は、「第3回 : タックスリターンについて② ~控除やアメリカ国外の資産~」でも触れた「外国金融口座報告書(Report of Foreign Bank and Financial Accounts)」についてご説明します。外国金融口座報告書は、通称「FBAR(エフバー)」と呼ばれ、海外在住者の中には申告の義務がある方がいます。違反をすると罰金は最低でも1万ドル以上になるので注意してください。
「FBAR」の重要なポイント

重要なポイントは2つがあり、以下のいずれかに該当するとIRSに申告する必要しなければなりません。

  1. アメリカ国外からお金または資産を受け取ったかどうか。
  2. 現在アメリカ国外に資産があるかどうか。

罰金を避けるためにもしっかり報告しましょう。

申告の対象

申告する必要があるのは、以下に当てはまる人です。

  • アメリカ市民でアメリカ国外の居住者
  • アメリカ市民でアメリカ国外で仕事をしている方
  • アメリカ国外の親戚がいるアメリカ市民の方
  • 国外で生まれた(または育った)、後にアメリカ居住者またはアメリカ市民になった方

申告しないでいると、それぞれの年に対して最低で1万ドルの罰金がかかります。遺産相続の場合は1万ドルの罰金、または申告すべき金額の35%になることもあります。贈与の場合は、贈与額の5%、または最大で25%です。

申告対象

「FBAR」の対象には、アメリカ国外からの贈与や相続、投資信託口座、国外銀行口座、株の所有権、さらに世界中の所得の申告があります。

アメリカ国外からの贈与、遺産相続の申告
一般的に贈与、遺産相続の受領者は非課税です。しかし、国外の個人などから年間10万ドル以上、または国外のパートーナーシップやコーポレーションから1万5601ドルを受け取った場合は、IRSに報告する必要があります。※報告のみで納税の必要はなし。
アメリカ国外の投資信託口座の申告
対象となるのは、投資信託口座の受益者本人、投資信託から配当を受け取った場合です。
アメリカ国外銀行口座の申告
1年間のうち1度でも合計残高が1万ドルを超えた場合、申告の対象となります。対象になる口座は、定期預金、投資信託、投資口座、その他金融口座になります。
世界中の所得の申告

租税条約や税法の特別な規定を除いては基本的に、アメリカ市民と居住者は世界中の所得を申告し、税金を支払う必要があります。国内外の2重課税を避ける2つの方法には「The Foreign Earned Income Exclusion」と「The Foreign Tax Credit」があります。

Q&A
Q
もしも口座間で移動がある場合は?
A

年末の残高でよいです。年末の残高が5万ドル以上であれば、「FATCA8938(外国口座税務コンプライアンス法:Foreign Account Tax Compliance Act)」が必要で、その際修正申告もします。FATCAは1040と一緒に提出する必要があるからです。

Q
1万ドル以下の残高の口座は、FBARで申告しなくていい?
A

全口座の残高の合計が1万ドル以上の場合は、全部の銀行口座を申告します。例えば口座Aの残高が千ドル、口座Bの残高が9千ドルで、AもBも1万ドル以下ですが、合計すると1万ドルなので、口座Aも口座Bも申告します。

Q
保険口座も「FBAR」と「FACTA8938」の申告が必要?
A

満期型の保険の口座も、「FATCA8938」への申告が必要です。

Q
「FACTA8938」への申告は銀行のみが対象なの?
A

銀行だけでなく、証券と保険とゴールドなどの投資も含まれます。金融会社の名前、住所、口座番号などの情報が必要です。

Q
口座の残高が0円でも申告が必要?
A

その年の口座の最高残高を申告します。その口座がまだ有効でアクセス権利を持つ場合は申告が必要です。

Q
利子がなくても申告が必要?
A

「FBAR」は利子があってもなくても申告します。保険のキャッシュバリューは、保険の解約返戻金または解約時支払金額です。

2022年 6月 6日更新

Columnist's Profile

会計士・CPA尾崎真由美(Todd's Accounting Services / 尾崎会計事務所)

ワシントン州会計士、法学修士、経営学修士、尾崎会計事務所代表、シアトル国際会計代表も兼務。長年にわたる経験と知識で個人のお客さまから法人のお客様まで、個々のニーズに合わせたサービスを提供してきた。個人向けタックスリターン、相続税、その他タックスプランニングはもちろん、法人向けサービスとして会社設立サポートやアウトソース、ブックキーピング、会計税務コンサルティング等、幅広いサービスを展開。親切、お客さまに満足していただけるサービスを提供する。

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