まるわかりハーグ条約

ハーグ条約は国境を越えた子どもの移動に関する条約です。多くの皆さんに正しく知ってもらえるようにコラムを執筆します。ぜひお読みください。(本コラムはロサンゼルスの事例を中心に紹介しています。)

2020年10月 6日更新

日本での裁判手続きについて

今回は日本での裁判手続きについてお話いたします。米国に住む残された親(子どもを日本に連れ去られた親、あるいは子どもを日本に留置された親)が、子どもの返還を求めて日本の裁判所に子の外国返還裁判の申立を行った場合、どのような流れになるのか、架空の事例を用いてご説明します。

基本用語の説明
[ 連れ去り ]
子どもを監護する権利を持っている親の同意がないのに、もう一方の親が子どもを国境を越えて移動させること。
[ 留置 ]
期限付の約束で国境を越えて子どもを移動させたあと、約束の期限が過ぎても子どもを元いた国に戻さないこと。
[ 監護の権利 ]

日本の民法の身上監護権に近いもの。子の居所(どこに住むのか)を決定する権利を含む(日本の親権は身上監護権と子の財産の管理権の二つから成り立っている。)。

≪ 事案A ≫
  • 父親(米国籍)と母親(日本国籍)は2015年に米国にて結婚。
  • 2016年に子ども(日米二重国籍)が誕生。
  • 親子3人は米国で共に生活していたが、次第に夫婦間でケンカが増える。
  • 2019年12月末 日本の年末年始を子どもに体験させたいと、父親の同意のもと、母親と子どもが2週間の滞在予定で日本に一時帰国。その後、約束の期限を過ぎても母親が子どもと日本に留まっている。
  • 父親は子どもを米国に連れ戻そうと、ハーグ条約に基づいて子どもの返還を米国中央当局(国務省)に申請。その後、日本中央当局に申請書が移送され、条件を満たしていたので、日本でも子どもの外国返還援助(日本中央当局が、手続上の支援等を提供)が決定される。

事案Aの当事者は、当初、話し合いで解決(当事者同士、もしくは第三者を介した話し合い(ADR:裁判外紛争解決手続))を試みましたが上手くいかず、裁判手続で解決しようと、父親が裁判を申立てることにしました。ここで、注意していただきたいことは、子どもの外国返還裁判は、子どもを元いた国に返すのかどうかについて判断をする手続きで、子どもの監護権や親権を誰が持つのかということを判断する手続きではないということです。また、子どもの監護権について話し合うことは、子どもが元いた国で行うことが、子どもの福祉に適うとの考えから、ハーグ条約では原則子どもを元いた国に返還することとしています。

子どもの外国返還裁判では、子どもの常居所地国がどこであるのか、申立人の監護の権利が行使されていたのか、申立人は連れ去り等に事前に同意していたのか、もしくは事後に黙認していたのか、子どもの意見(*1)、また子どもにとって重大な危険(*2)があるのか等が判断されます。常居所地国は、連れ去りまたは留置が始まる直前に子どもが住んでいた国と判断されることもありますが、個々の事案の事情(居住目的、期間、他の要素)により、裁判所が総合的に判断します。

日本での返還裁判は、東京か大阪の家庭裁判所で行われます。子どもの返還を望む親は、このどちらかの裁判所に申立てを行います。裁判手続きは迅速に進み、通常、裁判所が判断する前に裁判所内の調停が行われることが多いです。調停では、子どもの返還・不返還以外のこと(例えば、婚姻費用、子の監護、面会交流など)についても柔軟に話し合うことが出来ます。この調停で両当事者が子どもの返還もしくは不返還に合意すれば手続きは終了します。合意が出来ない場合は審判に進み、裁判所が子どもを返還するかどうかを判断します。この判断(決定といいます)にどちらかの当事者が不服であれば、次の裁判に進む即時抗告(*3)を行います。以下の図は、裁判手続きの流れを示しています。

用語の解説
*1 子どもの意見

子どもの利益を確保するためには、子どもの意思を尊重することが重要であると考えられるため、ハーグ条約第13条第2項及びハーグ条約実施法(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約に関する法律)第28条第1項第5号において、子の返還拒否事由(例外的に、子の返還を拒否することが出来る事由)として、子どもの意見を考慮する場合があります。子どもの意見は全て考慮されるわけではなく、子どもの年齢及び発達の程度に照らして子どもの意見を考慮することが適当である場合に限ります。このような場合に該当するか否かを適切に判断するため、心理学等の行動科学の専門知識及び技法を有する家庭裁判所調査官の調査等が実施されます。

*2 重大な危険

子どもの心身に害悪を及ぼすこと、その他、子どもを耐えがたい状況に置くこと。

*3 即時抗告

審判事件については、裁判官が、当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果など種々の資料に基づいて審判します。この審判に不服があるときは、2週間以内に不服(「即時抗告」といいます。)の申立てをすることにより、高等裁判所に審理をしてもらうことができます(引用:裁判所)。

*4 期日

裁判所、当事者、その他の関係人が裁判所の法廷又は一定の場所において話し合う、又は自分の言い分を書面で主張したり、裁判官の面前で言い分を聞いてもらうためにあらかじめ指定された時間のこと。

※コラム内の説明には、専門・法律用語ではなく、できるだけ分かりやすい表現を使用しています。正確な用語や詳細については外務省ハーグ条約室のホームページをご覧ください。

2020年10月 6日更新

ハーグ条約について知りたい方は以下をご参照ください。

Information

広報班外務省ハーグ条約室(外務省ハーグ条約室)

日本では2014年4月1日にハーグ条約が発効しました。ハーグ条約では各締約国に中央当局の設置を義務づけており、日本では中央当局を外務大臣とし、その実務を外務省ハーグ条約室が担っています。

ハーグ条約室では、少しでも多くの方に正しくハーグ条約について理解してもらうべく、国内外で広報活動を行っています。

ハーグ条約について様々な角度から解説していきます。ご不明な点がありましたら、以下までお問い合わせください。

外務省ハーグ条約室

日本、〒100-8919 東京都千代田区霞が関2丁目2-1
TEL:
+81-3-5501-8466
EMAIL:
hagueconventionjapan@mofa.go.jp

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