米国公認会計士による、わかりやすい!会計・税金101

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2023年 2月 2日更新

第10回 : 2022年度のタックスリターンについて

2022年度のタックスリターンの申告期限が近付いています。今回のコラムではタックスリターンについてご説明します。

基礎知識と仕組み
Q
アメリカのタックスリターン(Tax Return)について教えてください。
A

連邦政府(Federal)と自分の住んでいる(および収入を得た)州または市に、日本でいう確定申告を行うことを指します。過払いの税金の払い戻し、あるいは不足分を納税することで、追徴税や罰金を防ぎます。市民権やステータスにかかわらず、アメリカ国内で所得があれば申告が必要です。ただし一部のビザ保持者は除外されることもあります。

Q
パートタイムやOPTなど、収入が少なくても必要でしょうか?
A

タックスリターンは収入額にかかわらず申告しなければなりません。控除やクレジットなどさまざまな税法上のシステムがありますので、少額の収入であってもお金が戻ってくる可能性があります。

Q
2022年度の申告期日はいつですか?
A

2023年4月18日(火)に締め切り予定です。

Q
申請に必要なものは何ですか?
A

申請者は必ずソーシャル・セキュリティー・ナンバー(SSN)を保有している必要があります。新たに米国にやって来た場合は、社会保障事務局に申請し取得します。通常、就労ビザの配偶者・扶養者など、SSNがない人は、ITIN(Individual Taxpayer Identification Number)と呼ばれる個人用納税者識別番号を申請します。納税義務がある限り、タックスリターンは過去にさかのぼって申請可能です。こういった事情がある場合、対応がそれぞれケース・バイ・ケースになるので、会計士に別途相談することをお勧めします。そして、もう一つ勤務先から送付されるW2 フォームが申請に必要です。これは1年間の収入と源泉徴収について記した書類です。万一紛失した場合は、再発行を申請してください。

Q
控除(Deduction)について教えてください。
A

タックスリターンの際に経費などを申告して収入から差し引き、税額を抑えることを指します。固定資産税や住宅ローンの利息分に始まり、非営利団体やチャリティーへの寄付など、一般的な「経費」のイメージにはない項目も控除の対象になります。2022 年度の夫婦合算申告の基礎控除額は、前年度より 800 ドル増の 2万5900 ドルです。独身者と夫婦別姓の場合、基礎控除額は 400 ドル増の 1万2950 ドル、世帯主の場合、600 ドル増の 1万9400 ドルです。これと別に項目別控除(Itemized Deduction)もあります。医療費や経費を個別に申請する方式で、もし基礎控除よりも合計金額が多くなったら、この項目別控除を使って申請すると得する可能性があります。家を持っている、申請する州の税金が高いといった人は、この項目別控除を選ぶことが多いです。

Q
医療費も控除対象と聞いたのですが、どこまでが範囲ですか?
A

認可された医療費のうち、収入の7.5%以上の金額がかかると控除対象です。医院での診察、治療、疾患予防の他、処方箋、医療保険料も該当します。また、医療・介護保険、介護サービス、禁煙プログラムなどの費用も対象と見なされます。冷暖房器具や除湿機などが当てはまることもありますので、詳細は会計士に相談してください。

Q
クレジット(Credit)は、控除とは何が違うのでしょうか?
A

控除とは、収入額から控除額を差し引き、課税対象額を減らすことを指します。例としては、基礎控除や項目別控除が当てはまります。その課税対象額より、税金が算出されます。クレジットはその税金そのものを減らすことができます。例としては、Child Tax CreditやChild and Dependent Care Tax Creditなどが当てはまります。2021 年度はChild Tax Credit のCredit の額および対象年齢が拡大されておりましたが、2022 年度は、これまでの水準に戻り16 歳(12/31/2022 時点)に引き下げられ、Credit の額も2000 ドルとなりました(ただし、Refundable Credit の額は1500ドル) 。また、Child and Dependent Care Creditに関しては、共働きのご夫婦のお子さんに対するCare Expenses に対して、2021 年度は最大で4000ドル(2 人以上の場合、8000ドル)だったCredit が、2022 年度は3000ドル(2 人以上の場合、6000ドル) と変更となり、またRefundable Credit ではなくなりました。

Q
アメリカ国外にいる場合はどうすればよいですか?
A

申告はどこにいても義務付けられています。オンラインや郵送でも申告は可能です。また、基本的にはどの会計事務所も海外からの相談に対応してくれると思います。今年中に日本に永久帰国したり、別の州に転居したりした場合は、別途申請が必要です。

Q
締め切りを過ぎてしまった場合は?
A

IRSよりペナルティーが課せられる場合があります。また、遅延期間分だけ納税額に対して、利子が算出され増税されることがあるので、締め切りに間に合わない場合や、締め切りを過ぎてしまったら早めに会計士に相談しましょう。

FBRAについて
Q
アメリカ在住の日本人が特に注意したい確定申告のポイントはありますか?
A

厳密には確定申告ではありませんが、ほぼ同時期に申告締め切りがある「外国金融口座報告書(Report of Foreign Bank and Financial Accounts)」、通称「FBAR(エフバー)」はあまり日本人に知られていないようです。これは、アメリカで確定申告をする必要がある方(税法上のアメリカ非居住者は除かれる)が国外に一定額以上の資産を持つ場合、脱税などの不法行為を防ぐために、アメリカ財務省にその金額を申告しなければならないというものです。アメリカ市民、永住権(グリーンカード)保持者、あるいは就労ビザでアメリカに滞在していてSubstantial Presence Testを満たしている人のうち、アメリカ国外の銀行口座、投資信託口座、生命保険口座などを含め、合計1万ドル以上を保有している人が申告対象です。

Q
今現在で1 万ドルの合計資産がなければ、申請は不要ですか?
A

現在ではなく、その1年間(今回の申告だと2022年)のどこかで、一瞬でも合計金額が1万ドルを超えていたらその最高額を申告しなければなりません。FBARはあくまで申告を求めるものであり、この金額を基に課税されるものではない点に留意しましょう。ただし、申告の義務を知りながら申告しなかった場合は、最低1万ドル以上の罰金が課せられる恐れがありますので必ず申告しましょう。申告漏れが故意だと認められるほど、罰則が重くなっていくという仕組みです。 

Q
国外資産を申告して、それに基づき課税される制度があると聞いたのですが、FBARではないのでしょうか?
A

フォーム8938こと「特定外国金融資産報告書(Statement of Specified Foreign Financial Assets)」は、FBARと似ていますが異なります。フォーム8938は「外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act)」、通称FATCAに基づき、投資型保険などの財産を含むアメリカ国外の資産をアメリカ税務局(IRS)に申請しなければならないという制度です。フォーム8938は、確定申告の一部として処理されます。また対象の資産額の基準も細かく設定されており、FBARとは設定が異なりますのでこの2つを混同しないようにしましょう。ただし、上記申告に基づき課税対象額が変更になるということはありません。

Q
FBARをうっかり申告し損ねてしまった場合は、どうしたらいいですか?
A

もし4月の期日に間に合わなければ、最長で10月ごろまで延長で申告ができるようになっています。もし過去数年分の申告漏れがある場合は、さかのぼって申請することも可能です。FBAR、そしてフォーム8938は個人によって申告プロセスや必要書類が異なりますので、詳しくは会計士に個別にご相談ください。

注: 本記事は一般的な情報をまとめたものです。詳細は専門家にご相談することをお勧めします。

2023年 2月 2日更新

Columnist's Profile

会計士・CPA尾崎真由美(Todd's Accounting Services / 尾崎会計事務所)

ワシントン州会計士、法学修士、経営学修士、尾崎会計事務所代表、シアトル国際会計代表も兼務。長年にわたる経験と知識で個人のお客さまから法人のお客様まで、個々のニーズに合わせたサービスを提供してきた。個人向けタックスリターン、相続税、その他タックスプランニングはもちろん、法人向けサービスとして会社設立サポートやアウトソース、ブックキーピング、会計税務コンサルティング等、幅広いサービスを展開。親切、お客さまに満足していただけるサービスを提供する。

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