心療内科医
久賀谷 亮 TransHope Medical TEL: 424-247-9642

最新コラム

第96回 : 
『ジョーカー』と『パラサイト 半地下の家族』

バックナンバー

第1回 : 
被災地の「こころ」
第2回 : 
被災地の「こころ」 2
第3回 : 
被災地の「こころ」 3
第4回 : 
夏目漱石の 『こころ』 と三島由紀夫
第5回 : 
M.I.T. Media Lab
第6回 : 
被災地の 『こころ』 一年
第7回 : 
「こころ」 はユニバーサル
第8回 : 
「新型うつ」 というのが話題らしい
第9回 : 
自分のことが嫌いな人へ ~自尊心について~
第10回 : 
ブレイン・フィットネス
第11回 : 
脳の錯覚とポジティブ思考
第12回 : 
不確実性とつきあう — 不安克服法 —
第13回 : 
フェイスブックの心理学 【1.フェイスブック依存】
第14回 : 
薬をつかわない 「うつ」 の治療最前線
第15回 : 
フェイスブックの心理学 【2.つながるほど孤独】
第16回 : 
「うつ」 今注目の最新治療 『TMS』
第17回 : 
「リンカーン」のメランコリー
第18回 : 
眠れませんか?
第19回 : 
フェイスブックの心理学 【3.コミュニケーションの変容】
第20回 : 
アンチエイジングの心理学 1
第21回 : 
アンチエイジングの心理学 2
第22回 : 
子育ての流儀
第23回 : 
私の 「こころ」 について
第24回 : 
「物忘れ、お困りですか? 外付け『記憶』ハードドライブをお買い上げください」。 —脳科学最前線:脳を補う、創る—
第25回 : 
ゴルフの心理学
第26回 : 
ゴルフの心理学2
第27回 : 
ひとのこころは読めるのか
第28回 : 
ADHDについて深く知る
第29回 : 
「幸せ」 の心理学
第30回 : 
結婚の心理学
第31回 : 
スピリチュアリティとこころ
第32回 : 
Future of the Mind
第33回 : 
The Secret Life of Walter Mitty ~自尊心について 2~
第34回 : 
パニックって? その1
第35回 : 
パニックって? その2
第36回 : 
アートとこころ
第37回 : 
耐久レースとこころ
第38回 : 
スピリチュアリティとこころ2
第39回 : 
スピリチュアリティとこころ3
第40回 : 
自律神経失調症とは
第41回 : 
怒りのコントロール
第42回 : 
あがり症
第43回 : 
「Dr.倫太郎」
第44回 : 
学校では教えない人生の叡智
第45回 : 
マインドフルネス
第46回 : 
旅薬
第47回 : 
ペットロス症候群
第48回 : 
マインドフルネス 2 - 比較文化論
第49回 : 
マインドフルネス 3
第50回 : 
セックスレスの心理学
第51回 : 
あなたの脳を知る
第52回 : 
最新「こころ」の研究
第53回 : 
Deep TMS
第54回 : 
認められるということ
第55回 : 
APPSとメンタルヘルス
第56回 : 
「夜と霧」
第57回 : 
成功の実現
第58回 : 
レジリエンス
第59回 : 
脳の休め方
第60回 : 
脳の休め方2
第61回 : 
世界にひろがるマインドフルネス(マインドフルネス4)
第62回 : 
「過労死」
第63回 : 
人工知能(AI)―人間が引退する日―
第64回 : 
「フェデラーと老いの心理学」
第65回 : 
自己肯定感と承認欲
第66回 : 
「まかない食」
第67回 : 
「脳休」
第68回 : 
小林麻央さんのこと
第69回 : 
醜形恐怖
第70回 : 
黒い犬
第71回 : 
親業とこころ
第72回 : 
弓と禅
第73回 : 
究極の「怖れ」克服法
第74回 : 
自然と脳
第75回 : 
脳から身体を治す
第76回 : 
非日常との境界
第77回 : 
「戦争と平和」
第78回 : 
日本の開国
第79回 : 
自尊心について5
第80回 : 
滝のうら
第81回 : 
「食」と「旅」
第82回 : 
「セリーナ・ウィリアムズと怒りの心理学」(怒りとこころ2)
第83回 : 
「東洋化グローバライゼーション」
第84回 : 
「日日是好日」
第85回 : 
OCD
第86回 : 
プロのホームレス
第87回 : 
偏愛の力
第88回 : 
多様性の教科書
第89回 : 
ゆるすということ
第90回 : 
黒い犬の正体
第91回 : 
自然と脳2
第92回 : 
「ライフ・スペース」という概念
第93回 : 
マインドフルネスと科学
第94回 : 
「こうあるべき」
第95回 : 
天井のない階段
第96回 : 
『ジョーカー』と『パラサイト 半地下の家族』

『こころにまつわるおはなし。』

「こころ」 をキーワードに、様々な話題を提供します。

2014年 3月 27日更新

第29回 : 「幸せ」 の心理学

「人生のゴールは?」 と聞かれると、「幸せになることです。」 と答える方は多いでしょう。
では、「幸せとは何ですか?」 と尋ねられると、答えに窮してしまう方が多いのではないでしょうか。

実際、幸せを定義すること、測定することは、容易ではないようです。 近年、幸せを学問的に解析する流れが出てきています。 「幸せ」 の歴史と測定方法については、(*1,2) をご参考にしてください。 『幸せのメカニズム : 実践・幸福学入門』 著者の前田隆司は、幸せの因子を 「四葉のクローバー」 と表現して、以下のように挙げています。

第一因子

「やってみよう!」 因子 : 自己実現と成長

第二因子

「ありがとう!」 因子 : つながりと感謝

第三因子

「なんとかなる!」 因子 : 前向きと楽観

第四因子

「あなたらしく!」 因子 : 独立とマイペース

これ以外にも、幸せの分析はなされ、それを測定する尺度も出来てきています。

『Happy』 (2011年) というタイトルの映画があります。 冒頭では、発展途上国で人力車を引く仕事をする男性が、アメリカ人の平均よりも幸せであるというデータが紹介されます。 彼の家は、お世辞にも快適そうにはみえない掘建て小屋のようです。 道路は舗装されず、ブランド品にも縁がありません。 このドキュメンタリー映画は、幸せという漠然とした概念を学問的に検討した結果を紹介していきます。 かつて心理学は、「うつ」 などネガティブな側面にのみ焦点を当ててきました。 しかし、ここで人々が知りたい「幸せに生きるにはどうしたらよいのか」 という側面にもようやく光を当て始めたのです。

幸せは、遺伝子によって48%が規定されるとデータは示しています。 わずか10%が社会的地位や財産で規定されるようです。 残りの42%は、あなたが自らの意志で何を行うかということによって決まるようです。

「お金」 は、幸せの指標として考えられがちですが、それが幸せ (感情的幸福) の度合いと比例するのは、年収7万5千ドルほどまでだそうです。 チャールズ・チャップリンも言いました。 「ある程度のお金は必要だ」 と。 ですがそれ以降は、「お金ではない」 のです。 これは物質、つまり車や家や装飾品にも同じことが当てはまります。 そういったものを得ることによる感銘は、せいぜい6か月ぐらいしか続かないとされています。 そして、さらに「もっと」 欲しくなるのです。 宝くじで大金を手にした人の人生が結果的に悲劇を辿ることを聞かれたことがあると思います。 参考までに、年収と幸福度の関係については、上記の年収以上でも比例するという研究結果もあることを触れておきます (*2)。 さらに消費については、物質として得るより、体験 (旅行、コンサートなど) として消費した場合の方が、幸福が長く続くそうです。

物質的なものに寄居する幸せは、持続が短いとされています。 地位や財産もそのカテゴリーに属します。 この場合、短い幸福の後、再び次の物質的幸福を見つけて追いかけなければいけないという 「快楽のランニングマシーン」 (*1) という、ゴールのない 「不幸」 の道が待っているのです。 これは一般にもよく語られることかと思いますが、実際データもそれを証明しているようですね。 一方、物質的 (地位財というそうです) でないもの (非地位財) は、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、愛情などだそうです。 これらは逆に、持続的な幸福を提供するのです。

地位財と非地位財をバランスよく求めていくことも薦められています。 また、年齢を重ねるにつれ、より非地位財に重きを置くこともいわれています。

他のデータでは、アメリカの大富豪の幸福度は、7点満点中5.8点でした。 一方、マサイ族やアーミッシュは、物質的に大変質素ですが、5.4と5.1で大富豪達と大きな違いがみられませんでした (*2)。

映画のなかで、美貌をもった女性が、事故により美貌を失うどころか、顔面に後遺症を残してしまうストーリーが紹介されます。 その女性が多くを失うなかで、事故以前より幸せを感じるに至る経過が紹介されています。 外観や若さも幸せを必ずしも十分に説明しないようです。

映画内では、地位など自己イメージを重視する人は、不安や葛藤が高い傾向にあると言っています。 逆に 「自らの成長 Self Growth」 (他人との比較は、幸福にとって害のようです。 『幸せを科学する : 心理学からわかったこと』 大石繁宏著)、「仲間Relationship」 「他者を助けようという欲求 Desire to help others」 は、幸せとつながるようです。 前出の前田隆司の第一、第二因子とつながります。

ハーバード大学でPositive Psychology あるいはScience of Happinessについての人気講義を持つTal Ben-Shaharによると幸せになるためのヒントとして、

  1. 1
    自分や他人が人間であるということ、それ故に、ネガティブな感情を持ったり、ぶつけたりすることがあることを、受け入れること。
  2. 2
    少ないことをよしとする : 質素さをよしとし、色々やり過ぎて愛する人と過ごす大事な時間を削らない。 量よりも質など。
  3. 3
    運動 : ドーパミンはモチベーションにつながり、幸せと関連する脳内物質としてあげられます。 運動はドーパミンをあげる一つの方法です。

などがあるそうです。

前田隆司の第二因子にある 「つながり」 についてですが、人間関係のなかで大きな一つが結婚です。 結婚での満足感と幸福度は相関するようです。 しかし、二人のおしゃべり度や心配症度はマッチしなくても、税金やリサイクルなどへの 「価値観」 がマッチしていることが、より幸福度と結びつきやすいようです。 あるいは自己評価より、伴侶に対しての評価が高いことが結婚にポジティブに、そして幸福度につながることが結果として言われています (*2)。

国レベルの幸福度についても、地位財、つまりGDPとは必ずしも比例しないようです。 日本は経済的に豊かな国々のなかでは、最も幸せ度が低い国とされています。 「過労死」 が映画内でも、世界に特徴的な現象として紹介されています。

デンマークは幸せ度の高い国として挙げられます。 無料の教育制度、社会福祉などが理由とされています。 「幸せ」 に配慮した国づくりが、特に日本には必要のようです。 ちなみに、映画内で沖縄は、長寿で幸せのモデルがある土地としてあげられています。 参考になるでしょう。

国の成熟とともに、地位財から非地位財重視へ移行していくことは、個人の成長と同じなのですね。 日本はそっちへ向かっていますか?

日本人の傾向として、現在も、高度成長的な地位財指向と勤勉さがみられます。 「ゆとり」 というものがうまく馴染まない土壌があるようです。 さらに勤勉に働くこと、この 「仕事」 というものが、前田隆司の第一因子の自己実現の筆頭方法として君臨しています。 勤勉な国民性は素晴らしいことですが、「幸せ」 ですか?

ところで、会社でもみられる 「フロウ」 という現象が言われています (*3)。 丁度、創世記のソニーがそうであったという向きもありますが、社員が一体となって難関を乗り越え 『ウォークマン』 など、凄まじい普段では達成できないようなことを実現する状態です。 スポーツでいえば、苦がそれほどなく、世界記録がでるような時です。 この 「フロウ」 というのはどこかで 「幸福感」 とつながるのではないかと考えられています。 そんな職場でなにかを達成するカタルシス。 これは素晴らしいことですね。 ちなみに、幸福度は、学業、経済的達成、健康、長寿などにポジティブな効果を与えるようです。 「笑う角には福来る」 ということでしょうか? 前田隆司の第三因子にもあげられています。

大石繁宏によると、幸せになるためにできることは、

  1. 感謝する。
  2. 満喫する。
  3. 他人にやさしくする。
  4. 最高の自分のイメージを持ち続ける。

などだそうです。

研究者によって違いはありますが、共通項も多く、幸せになるためにどうすればよいのか、参考になりますね。

ビル・ゲイツは、マイクロソフトでバリバリやっていたときよりも、現在の方が 「幸せ」 だと感じていると思います。 人間は競争心や生計、他者から評価されたいがために、到達点のみえない戦いを日々しているようです。 人生には不条理や、教科書には書いていないような見えないルールがあるようです。 ここではスピリチュアル的なことにはあまり踏み込みませんが 「戦わない」 「世間様の常識に翻弄されない」 ことで、「幸せ」 への道がみえてくるような気がします。

私がクリニックで出会う人たちと、幸せについて話し合うことは多いです。 究極的なゴールはそこだと思うからです。 例えば 「うつ」 が原因で受診した方の状態が改善しました。 しかしそれに留まらす、その方が 「幸せ」 へ向かっていく手助けをすることも我々の役割だと考えます。 そうすることで、その方は将来 「うつ」 を予防し、それとは対極の位置に自分を置けるからです。 また、私の領域では、「幸せになってはいけない」 と思う人や、「達成しても達成しても不十分と感じ、永遠にハードルを課していく」 という方に出会うことがあります。 前者は例えば、過去に何かの理由で自責感や自虐感が培われ、幸せになることを拒否する例です。 後者は、子供時代に親から妥当な評価を受けなかったことなどの理由で、果てしなき戦いを続け、いつまでも幸せになれないという現象です。 いずれも自己評価の低さと、自己成長の難しさが特徴でしょうか。 こういった方々の内面のリカバリーも大事な手助けです。

「幸せ」 の実体がはっきりしてきたことで、それへと向かうための道がみえてきたことは人類にとって朗報だと思います。

《参考文献》
  1. 前田隆司著 幸せのメカニズム: 実践・幸福学入門。 講談社現代新書
  2. 大石繁宏著 幸せを科学する: 心理学からわかったこと。 新曜社
  3. Mihaly Csikszentmihalyi Flow: The Psychology of Optimal Experience. Harper Perennial Modern Classics

2014年 3月 27日更新

くがやこころとからだのクリニックでは、
「こころ」 にまつわる様々なご相談や、こころの健康チェック、ケアを提供しています。

▼ドクター久賀谷による「マインドフルネスx脳科学」ホームページを開設しました!

https://www.beinamoment.org

ドクター久賀谷によるマインドフルネス 著書・旅企画・コーチングをまとめて紹介。クリニックと合わせてよろしくお願いします!

▼「患者さまの声」ページ 随時更新中!

https://thmedical.org/diagnosis/testimonials/

クリニックホームページ内で診療を受けられた方の動画・音声、そして寄せられたお手紙などをご覧いただけます。
診療セミナーやマインドフルネス・TMS治療に関する患者さまの声。

▼心療内科専門医による各種プログラム
不安/パニック より早い改善をカウンセリングとお薬またはTMS治療を必要に応じて組み合わせることで実現
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心療内科医久賀谷 亮(TransHope Medical)

イェール大学医学部神経精神科卒。日米医師免許。趣味 : トライアスロン。TransHope Medical / くがやこころとからだのクリニック院長。「TransHope」 は、Transglobally (国境を越えて)、Transculturally (文化を超えて) に、Hopeを手渡していくことを意味します。

眠れない、疲れやすい、集中できない、気分が晴れない、ストレスによるこころとからだの反応、ライフスタイル改善(体重、仕事パフォーマンス、喫煙)、うつ、パニック、ADHDなどに医学的診察とケアを提供します。

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