びびなび : ロサンゼルス : (アメリカ合衆国) Los Angeles

＜サラのケース＞

夫のDVを理由に離婚したサラさんは、現在再婚し、新しいご主人との間にお子さんも生まれ幸せに暮らしています。

前夫のジョンとは、サラさんがメキシコからアメリカに語学留学していた折に通っていた学校で知り合い、同じメキシコ出身ということですぐに打ち解け、お付き合いを始めました。サラさんはメキシコで看護師をしていたこともあり、その後アメリカで看護師の資格を取得し、病院でビザのサポートを受けながらグリーンカードを申請していました。ところが、前夫は仕事は見つかったものの給料が低い上に重労働で、その後転職を繰り返していました。その頃にはサラさんの配偶者としてビザを申請できたのですが、収入も安定せず、不満やいら立ちからサラさんや子どもたちに叩く、蹴る、殴るという暴力を振るうようになりました。

サラさんはビザの状況が落ち着けば、DVもなくなると思い我慢していました。このような状態が何年も続く中、前夫が投げたグラスが割れてその破片で自身と子どもがけがをするまで、サラさんは全くDVの危険性に気付いていなかったのです。それどころか、警察官が彼女を救おうとして質問をしても本当のことが言えず、暴力は年を追うごとにひどくなっていきました。

何度も警察が来ても、前夫の暴力を訴えることができなかったサラさんに何も問題がないとは言い切れず、それも問題の要因の一つです。実際「夫の報復が怖い」「逮捕されると収入源が無くなる」といった事情はあるのですが、何よりもサラさんと子どもたちの安全が一番大切なのです。DVではこういった状況下で、被害者が普通の判断ができなくなることはよくありますが、安全に暮らせない、不安定な状況に追い込まれるといった環境では、本当の幸せが続くことはありません。DVにおいて、ポリスレポートがあれば、暴力を理由とする接見禁止命令（レストレイニングオーダー）を発効したり、一時的な親権問題にも優位になる場合もあります。

結局、サラさんと子どもたちは、子どもたちの大けがをきっかけに病院が警察を呼ぶという結果になり、前夫のDV が明るみに出ました。その後、サラさんは当事務所にご相談に来られ、離婚のファイルをされたのですが、私たちは離婚申請と同時に接見禁止命令を出すことにしました。運良く暴力の証明となるセラピストや病院の記録に加え、暴力を受けた傷がある顔や体の写真およびビデオを裁判所に提出しました。前夫がサラさんや子どもたちの前で大声で叫ぶ様子を写したビデオは見るに見かねるものでした。当然、接見禁止命令は発行されましたが、前夫も弁護士を雇い、サラさんも暴力を振るっていたと嘘の証言をしましたが、証拠を出せず苦戦しているようでした。

DVでは特に子どもがいる場合、子どもをそのような危険な状況下に置かないことは大切であり、暴力を振るう大人にどんな問題があっても、それを許して放っておく言い訳にはなりません。また、このような環境に子どもをさらしていることも、さらに良くない状況を作り出すことになるだけです。

次回は、サラさんが接見禁止命令を経て、どのようにチャイルドサポートを取ることができたのかについてお話します。