- 既刊号
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- 第1次 : 米国の歯医者
- 第2次 : 米国の歯科保険制度
- 第3次 : 米国における歯科診療
- 第4次 : 歯を抜かない先生は上手な先生?
- 第5次 : 口臭
- 第6次 : 喫煙と口腔内の健康
- 第7次 : 磨り減った歯は自然現象?
- 第8次 : 噛み合わせと体の健康
- 第9次 : 今更の歯列矯正治療
- 第10次 : 日本でのインプラント死亡事故
- 第11次 : ハリウッドセレブの常識
- 第12次 : レーザー歯科診療
- 第13次 : 歯科インプラントって何?
- 第14次 : インプラント治療の応用
- 第15次 : ルミニアーズ®
- 第16次 : ルートキャナル
- 第17次 : 変わりつつある歯列矯正治療と患者層
- 第18次 : マイクロサージェリー
- 第19次 : 「優しい」抜歯法 -最新テクニック-
- 第20次 : インプラントロジスト
- 第21次 : 無呼吸症候群 Sleep Apnea
- 第22次 : 骨粗しょう症と歯科治療
- 第23次 : 新型コロナウイルスと歯科診療
日本人の心の中に歯を抜かないで治療してくれる歯医者は上手な先生-といった思いがあるようです。歯槽膿漏でぐらついている歯を日本では「勝手に抜けるまで様子をみましょう」といった治療方をとる歯医者をよく見かけます。歯医者の方も患者さんの思いを尊重してか抜かずに取っておくかのような治療法です。前号でご紹介した「もたせ型」の治療法です。
しかしながらこの治療方でいざ歯が抜けてしまうとインプラントを入れようにも入れるために必要な十分な骨量がない為に治療を困難にしてしまいます。また義歯をする場合も義歯が固定できるための十分な顎底が確保されていないために安定した義歯をすることが出来なくなります。ある程度歯槽膿漏が進行するとブラッシングだけでは治療することは不可能です。
ルートプレイニングと呼ばれるいわいる「ディープクリーニング」をし、場合によっては外科的な処置が必要になる場合があります。米国では基本的には歯根の50%以上の骨の吸収があった場合に抜歯に踏み切ります。これは歯全体の長さから比べると3分の1以下の骨量に相当します。この状態だと歯は前後に2ミリ前後の動揺があるのが通常です。この段階で治療もしないで抜かずにとっておくと骨の吸収は歯根端の部分を越えた時点で止まります。そこまで骨吸収がすすむとその後の処置が大変困難なものとなります。もちろん治療法の最終的な決定権は患者さんにありますのでどうしても歯を抜くのはいやだと思われる場合はその方向で治療を進めていく事になります。
今の技術ですと歯槽膿漏の進行を遅くするような処置法は可能です。しかしながら歯槽膿漏を治療せずに放っておくと歯だけの問題ではなく心臓病や肺炎の原因にもなるという事が最近の医学で分かってきています。患者さんの歯を取っておきたい気持ちは十分と理解できるのですがそういった状態にならないよう定期的な歯科検診を是非お勧めいたします。