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Sumiyo Sumikawa モンテッソーリ国際学園 info@monteintel.org

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いまなぜモンテッソーリ教育なのか?

モンテッソーリ教育はイタリアのマリア.モンテッソーリがつくった100年以上続いている世界で一番広く取り入れられている幼児教育です。このコラムで皆様の子育てのお役に立てると嬉しいです。

Updated on 2026/ 8/ 31

Vol.45 : 子どもの成長を支える「環境」と「生活」 ~モンテッソーリ教育から考える幼児教育~

前編 「環境を変えれば、子どもは変わる」 日本の幼稚園で改めて感じたモンテッソーリ教育の力

アメリカでモンテッソーリ幼稚園を運営する筆者が、日本への一時帰国を通して感じた幼児教育について、前後編の2回に分けてお届けします。

はじめに

アメリカでモンテッソーリ幼稚園の運営に携わる私は、今回、日本への一時帰国中に、かつての職場の先輩が再建に携わる幼稚園を訪ねる機会がありました。そこで目にしたのは、ほんの少し環境を整え、大人の関わり方を変えるだけで、子どもたちの姿が驚くほど変わっていく様子でした。わずか1日ほどの経験でしたが、改めて実感したのは、子どもを変えようとする前に、まず環境を変えることの大切さです。しかも、それは特別な教材や大きな費用を必要とするものではありません。今回の経験を通して感じた、子どもの「自ら育つ力」と、それを支える環境についてお話しします。

日本への一時帰国で、思いがけない再会

今回、日本に一時帰国したのは、お墓参りなどの個人的な用事があったためです。私は普段、夏の時期に日本へ帰ることが多いのですが、毎回それほど長く滞在するわけではありません。今回も短期間の滞在で、その間には東京での仕事もありました。そんな中、以前勤めていたモンテッソーリ幼稚園の先輩に会う機会がありました。

先輩は現在、ある幼稚園の再建に携わっています。昔からの関係者ではなく、新たに立て直しのために入ったということでした。「モンテッソーリの考え方を少し取り入れた幼稚園にしたい」という話を聞き、私たちはすぐに意気投合しました。私たちは2人とも、モンテッソーリ教育を学び、そこで働いた経験があります。ですから、子どもたちの姿を見ながら、「環境が変われば、子どもも変わるのではないか」という話になりました。「よかったら、一度見に来ない?」そう声をかけてもらい、私も幼稚園を訪ねることになりました。

「これは環境を変えた方がいい」

訪れた幼稚園は、かなり歴史のある園でした。建物自体は古いのですが、私はむしろ、昔ながらの幼稚園らしい良さがあり、空間そのものにも魅力があると感じました。

先輩から聞いたのは、広い部屋の中で子どもたちがおもちゃを次々と出して遊び、一つのことにじっくり集中する姿があまり見られないということでした。遊び終わったものもそのままになり、何か集中して取り組める活動を用意しても、すぐにおもちゃの方へ行ってしまう。そうした話を聞きながら、私たちは「これは子どもたちの能力の問題ではなく、環境の問題なのではないか」と話しました。

子どもには、本来、自分で成長していく力があります。その力が十分に発揮できるような環境になっているかどうか。それはとても大きなことだと思っています。そこで、「まず環境を変えてみよう」ということになりました。

たった2時間で、できることから

最初に私たちがしたのは、部屋を整理することでした。壁際に置かれていたものを片付け、棚などもいったん整理しました。いろいろなクラスから集まっていた棚を整え、ラベルをはがし、見た目にもすっきりとした空間にしていきました。作業をした時間は、ほんの2時間ほどだったと思います。そして、2日後に先輩と再び会うまでの間、私は「何かできるものはないかな」と思い、近くのダイソーに足を運びました。

そこで、トレーや小さなお皿、コップなど、日常生活の中で使えるものをいくつか買いました。特別な教材ではありません。高価なものでもありません。「これなら家庭でもできるな」と思えるような、ごく身近なものです。それらを棚に並べ、子どもたちが自分で選んで取り組めるようにしました。ちょうど夏休みで、園には子どもが2人来ていました。すると、子どもたちは環境が変わったことにすぐ気付きました。そして、自然に活動を始めたのです。

「やり方」を見せると集中が生まれた

もちろん、ただ物を置けばいいというわけではありません。モンテッソーリ教育では、子どもに「これをやりなさい」と押し付けるのではなく、大人がその物をどう使うのか、目的を持って丁寧に示します。

トレーをどう持つのか。物をどう扱うのか。どこから始めて、どう終えるのか。大人が落ち着いて、ゆっくりと見せる。すると、子どもたちの様子が変わっていきました。それまで一つのことに集中することが難しかった子どもが、目の前の活動に注意を向け始めたのです。ある女の子は、以前からハサミに興味を持っていたそうです。そこで、ハサミをどう持ち、どう使うのかを丁寧に提示しました。すると、そこからまた別の活動へと興味が広がっていきました。今度は色のものを並べ始めるなど、自分から次の活動を見つけていったのです。

私はその姿を見て、「やっぱり環境ってすごいな」と改めて感じました。たった1日です。環境を少し整え、大人が適切に関わっただけで、子どもの姿に変化が表れたのです。

子どもの中にあるものが、自然に出てくる

子どもに何かを「させる」のではなく、子どもが今、何に興味を持っているのかをよく見る。そして、その子が今必要としているものを、環境の中に用意する。そうすると、子ども自身がそこに手を伸ばし、活動を始めます。集中して取り組むことができるようになると、そこからまた次の興味や発達が自然に広がっていく。大人が無理に引っ張っていくというより、環境と大人の適切な関わりによって、子どもの中にあるものが自然に出てくるのです。

今回、そのことを目の前で見せてもらったような気がしました。そして、もう一つ強く感じたのは、「環境を変えることは、決して難しいことではない」ということです。今回使ったものの中には、100円ショップで買ったものもあります。家の中でも、少し物を整理したり、子どもが自分で扱える道具を用意したりすることはできます。大切なのは、高価な教材を買うことではありません。「この子はいま何に興味を持っているんだろう」「この子が自分でやってみるためには、どんな環境が必要なんだろう」そうやって子どもを見ることから始まるのだと思います。

私が本当にしたいこと

今回の帰国は、もともと仕事として計画していたものではありませんでした。ほんの短い時間、先輩の幼稚園を訪ねただけです。その後、私は研究所の仕事などもあり、そこを離れました。でも、帰ってからも頭の中では、「次はこんなものを置いたらいいな」「これも100円ショップで買えるな」と考えていました。そのことに自分でも少し驚きました。

普段の私は、オフィスワークや書類仕事など、やらなければならないことがたくさんあります。でも、今回子どもたちと過ごしてみて、改めて気づきました。私が一番したいのは、やっぱり子どもたちの成長と発達のために、自分の力を使っていくことなのだと。子どもたちが何かに集中している姿を見る。自分でやってみようとする姿を見る。そして、その中から新しい力が出てくる瞬間を見る。そういう時間が、私はやっぱり好きなのです。

今回の短い帰国は、私自身にとっても、モンテッソーリ教育の原点をもう一度思い出させてくれる時間になりました。そして何より、「子どもを変えようとする前に、まず環境を変えてみる」。そのシンプルなことの大切さを、改めて実感しました。

次回は、「後編―子どもを育てることは、親自身を育てること―「普通の生活」にある学び」をお届けします。

一時帰国の際に訪ねた幼稚園

今回訪れたのは、歴史ある幼稚園で、昔ながらの温かさを感じました。

環境を変える前の部屋の様子

整頓されていますが、子どもたちの集中力が続かず、遊び終わった後もそのまま放置されているようでした。

環境を変えた後の様子

絵本コーナーを部屋の端に設け、落ち着いて絵本を読める環境にしています。

ものをきれいに整えておくことで、子どもたちも美しさを感じられます。幼児期は、整った環境や秩序を好む時期でもあります。

水道の横には色分けしたタオルを置き、テーブルや床が汚れたときに、どれを使えばよいかすぐに分かるようにしています。

喉が渇いたときに、子どもが自分でお茶を用意できるようにしています。

道具をきれいに整えておくことで、「触ってみたい、やってみたい」という意欲が生まれます。プラスチックではなく、陶器やガラスなど、できるだけ本物の道具を使います。これらの「活動」に使う道具は、100円ショップなどでもそろえられます。

すぐに環境に反応して活動する子どもたち

「植物のお世話」

植物などの生き物の世話では、水をやりすぎないよう、終わったら札を立てます。ほかの子どもが同じ植物に水をあげるのを防ぐためです。

「麦茶を注ぎ、飲む様子」

喉が渇いたときのために用意しておいたお茶のセットを見ると、すぐに興味を持ち、おいしそうにお茶をいただいていました。自分で入れたお茶は、格別のおいしさのようです。

「すり鉢で鳥の餌を作る様子」

すりつぶした餌は、先生と一緒に外の餌入れに持っていきます。

トレーにセットすることで、ほかの活動と区別し、独立した活動であることが分かるようにしています。使うときは棚から取り出し、使い終わったら元の場所に戻します。誰かが使っている場合は、戻されるのを待ってから使います。こうした習慣を通して、片付けやルールを守ることを覚え、自分で行動を調整する力につながります。

「トングを使い移し替える仕事」

手や指先の動きを調整する練習になり、集中力も身につきます。親指・人差し指・中指の3本の指を使うことで、鉛筆を持って書くための準備にもなります。

「スプーンを使い移し替える仕事」

豆を最後まで移し替えることで、一つの活動を最後までやり遂げる力につながります。トレーには薄いマットを敷き、お茶碗が動かないようにしています。

Updated on 2026/ 8/ 31

Columnist's Profile

ディレクターSumiyo Sumikawa(モンテッソーリ国際学園)

公益財団日本モンテッソーリ綜合研究所研究員。モンテッソーリ国際資格取得コース (AMS認定) ディレクター。日本にてモンテッソーリ教師の資格を取得。幼稚園教諭として幼稚園に5年間勤務。その後、更にモンテッソーリを学ぶために渡米。American Montessori Society (AMS) 認定の幼児及び小学部の資格を取得し、Casa Montessori School にて3-6歳児のクラス担任として7年間勤務。2003年 University of California Los Angeles、で心理学学士号取得。行動療法士として自閉症児の支援をし、その活動の一環として、自閉症やその他の障害をもつ子どもたちにミュージカル“Cats”を指導。障害児とその兄弟姉妹たちで結成した“Miraclecats”のディレクターを務める。2009年College of St. Catherineにて教育学の修士号取得。現在は、サンタアナ市に英語と日本語のバイリンガル教育の幼稚園、モンテッソーリ国際学園主宰。

モンテッソーリ国際学園

2717 S. Halladay Street Santa Ana, CA 92705
TEL:
714-444-2733
EMAIL:
info@monteintel.org

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