皆様は“Sleep Apnea”という文字を目にしたことがありますか?最近アメリカで浸透し始めている言葉です。日本語で無呼吸症候群などと言われています。日本でもメディアで時々取り上げられているのでご存知の方も多いと思いますが、どんな病気か分からないという方がほとんどではないでしょうか?そこで今回は、この無呼吸症についてを解りやすくご説明したいと思います。また、何故歯医者の私がこの問題を取り上げているのかについても詳しくご説明したいと思います。
無呼吸症(Sleep Apnea)には、大きく分けると2つの種類があります。1つは我々の気道が物理的に塞がってしまうために呼吸ができなくなるタイプと、もう1つは脳の障害により、呼吸をする機能にダメージが出てしまうタイプです。ここでは前者を取り上げます。
前述のように、無呼吸症とは文字通り呼吸をしないことであり、我々が睡眠時に下顎が重力により落ち、舌などを含む筋肉が気道を塞いでしまうために呼吸が著しく小さくなったりあるいは全くできなくなることです。一般的に肥満体の特に男性に多い症状なので、そういう認識の方が多いと思います。私自身も以前はそういう解釈をしていました。ところがそれは大きな間違いでした。最近分かってきていることは、無呼吸症は太っている人だけでなく、誰にでも起こり得る症状で、しかも痩せ型の女性でも、重度の症状が出ている方が多くいるということが分かってきました。
無呼吸症が疑われる症状
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朝起床時に
- 頭痛がある。
- 目覚めが悪く6時間以上寝ていても寝足りない気がする。
- 十分睡眠時間を取っているはずなのに疲れが取れていない。
- いびきをかくと言われている。
- 高血圧で薬を飲んでいる。
- 糖尿病、あるいは糖尿要注意と診断されている。
- 疲れやすい。
- 仕事中や運転中に睡魔に襲われる事がよくある。
- 首回りが男性の場合16.5インチ以上、女性で15インチ以上ある。
- 夜中によく目を覚ます。
- 歯ぎしりをする。(Photo 1)
- 歯ブラシ磨耗が激しい。(Photo 2)
人間は、睡眠時のスリープサイクルという周期により、眠りの深さが常に変化しています。眠りが深くなった時に下顎が落ち、気道を塞いでしまうと(Photo 3)、呼吸をしようとしているため、胸はゆっくりと上がったり下がったりしますが、空気が入っていかないので、やがて苦しくなっていきます。しかし眠っているためこれに気がつかず、脳がこれ以上寝ていると危ないと判断して一時的に起こしてくれます。その際に分泌されるケミカルによって心臓の鼓動が著しく早まり、酸素をできるだけ体に行き渡らせようとします。その時、体が起きて呼吸をします。通常平均的に6秒間この動作を行ったのちまた眠りについてしまいます。そして呼吸困難に陥り、また脳が無理やり起こして呼吸をさせ心臓をフル回転させます。6秒間起きていても朝になって目が覚ました記憶は通常ありません。こういった動作を夜通し繰り返しているとだんだんと高血圧になっていくのです。そしてそれが進んでいくと、今度は血中の糖分をコントロールする機能が低下してしまいます。そのため、糖尿病になる場合もあります。治療を行い改善しないと脳梗塞を起こしてしまいます。現在分かっていることは、脳梗塞を起こした患者さんの9割が、無呼吸症の患者であるということです。言い換えると、無呼吸症が脳梗塞の原因になっていると言っても過言ではないのでしょうか?
アメリカ在住の皆様は、ニコチンの害がいかに大きいかということはよくお分かりだと思います。喫煙者は禁煙者に比べて5〜7%も寿命が短くなるという統計データが出ています。ところが、無呼吸症患者とそうでない患者を比べたところ、13〜17%も寿命が短くなると言われています。正直、このデータには私も大変驚きました。無呼吸症が脳梗塞の一番の原因になっているとすればそれも納得がいきます。ではどうすれば無呼吸症を解消できるのでしょうか?
無呼吸症の診断
無呼吸症は、その程度に応じてMild(軽度)、Moderate(中度)、Severe (重度)の三段階に分けられます。そしてそれらはAHIという指数によって分類されます。無呼吸症の症状は、一時間に1回から100回くらい起こります。AHIというのは、一時間あたりに何度のエピソードがあったかによる指数のことで、
異常なし:AHI<5回/時間まで
軽度:AHI 5回/時間以上15回/時間未満
中度:AHI 15回/時間以上30回/時間未満
重度:AHI 30回/時間以上
これらの診断は、通常、医師のオフィスからスリープセンターと呼ばれるところに紹介され、そこで一晩センサーをつけて睡眠をとってもらうのですが、最近はもっと簡単に自宅でテストを行うことが可能となりました。このテストの結果、無呼吸症があることが判明した場合、医師の診断のもと治療が必要になります。
無呼吸症の治療
重度の場合はCPAP (Photo 4)という治療が必要です。これは口と鼻を同時に覆うマスクをしてもらい、無呼吸症の状態に陥ると、センサーが察知して自動的に空気を送り込み呼吸をさせてくれます。とても信頼性のある治療ですが、デメリットとしては、顔に大きなマスクをつけているため、寝返りが打てず、寝苦しかったりします。
軽度から中度の場合は、オーラルアプライアンス(Photo 5、 6)、別名ナイトガードのような物を歯に被せるだけで治療ができます。簡単で装着感も違和感が少ないため、患者さんの受け入れはよいです。
お分かりでしょうか?ここで最初にお話ししていた、何故歯医者が無呼吸症の話をしているかという話になります。このアプライアンスは歯科医が行う治療なのです。また、無呼吸症の多くの兆候は口の中に現れます。したがって我々歯医者が第一発見者となり得る可能性が高いのです。
無呼吸症の治療の問題点
当医院では、問診による無呼吸症の簡単なスクリーニングを行っております。それに引っかかった患者さんには、スリープテストを行うことをお勧めしておりますが、患者さんの受け入れはなかなかスムーズにはいかないのが現状です。誰でもまさか自分がという気持ちがあるのと、目に見える問題点が察知できない場合が多いため、先伸ばしにしてしまわれる方が意外と多いのです。私はできるだけ時間をさいて、患者さんに説明をするように心がけています。患者さんがこの症状のリスクと治療のメリットをしっかりと認識していただけるように、これからも引き続き患者様の教育に力を入れていくつもりです。
無呼吸症の治療のメリット
当医院で無呼吸症の治療のためにアプライアンスを作られた方からは「アプライアンスを使用するようになってから夜中に目を覚ますことがほとんどなくなった」とよくお伺いします。今まで、前立腺肥大により夜中に目を覚ますのだと思っていた方も、実際には無呼吸症だったということもあります。呼吸がしっかりとできるようになると(Photo 8)、夜の睡眠の質が向上して、朝を快適に迎えることができ、またエネルギーもアップします。寿命も平均的に13〜17%長くなるというデータが出ています。これは素晴らしいことだと思います。また、歯科医院の治療であるにも関わらず、通常の医療保険の適用が可能ですので、歯科の保険を持っていない方でもカバーレージがあります。またメディケアも使用が可能です。詳細は当医院までお問い合わせ下さい。
《LA ・ ホンダプラザデンタルクリニック》
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