心療内科医
久賀谷 亮 TransHope Medical TEL: 424-247-9642

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第89回 : update
ゆるすということ

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被災地の「こころ」
第2回 : 
被災地の「こころ」 2
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被災地の「こころ」 3
第4回 : 
夏目漱石の 『こころ』 と三島由紀夫
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被災地の 『こころ』 一年
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「こころ」 はユニバーサル
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「新型うつ」 というのが話題らしい
第9回 : 
自分のことが嫌いな人へ ~自尊心について~
第10回 : 
ブレイン・フィットネス
第11回 : 
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第12回 : 
不確実性とつきあう — 不安克服法 —
第13回 : 
フェイスブックの心理学 【1.フェイスブック依存】
第14回 : 
薬をつかわない 「うつ」 の治療最前線
第15回 : 
フェイスブックの心理学 【2.つながるほど孤独】
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「うつ」 今注目の最新治療 『TMS』
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「リンカーン」のメランコリー
第18回 : 
眠れませんか?
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フェイスブックの心理学 【3.コミュニケーションの変容】
第20回 : 
アンチエイジングの心理学 1
第21回 : 
アンチエイジングの心理学 2
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第23回 : 
私の 「こころ」 について
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「物忘れ、お困りですか? 外付け『記憶』ハードドライブをお買い上げください」。 —脳科学最前線:脳を補う、創る—
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ゴルフの心理学2
第27回 : 
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The Secret Life of Walter Mitty ~自尊心について 2~
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パニックって? その1
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パニックって? その2
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第51回 : 
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人工知能(AI)―人間が引退する日―
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偏愛の力
第88回 : 
多様性の教科書
第89回 : 
ゆるすということ

『こころにまつわるおはなし。』

「こころ」 をキーワードに、様々な話題を提供します。

2013年 4月 25日更新

第18回 : 眠れませんか?

眠れないという症状は、当クリニックを受診する方々に一番多い訴えです。 無理もありません。 不眠を訴える方は全国でおよそ4人に1人と、日本の調査結果でわかっています。 ニューヨーク・タイムズの記事には、こんな面白いマインド・ゲームが挙げられています。

「シロクマを思い浮かべて下さい」。
「次に、他の何を思い浮かべても結構ですので、シロクマだけは思い浮かべないで下さい」。

多くの人はこのゲームに勝てません。 つまり、シロクマを意識から消し去ることができないのです。 考えないようにしようとすればするほど、人間の脳は考えてしまうようです。

そうです。 寝れないときのマインド・ゲームとそっくりでしょう。 寝よう寝ようと思えば思うほど、眠れないのです。 記事では、それを象徴するある研究結果に触れています。 学生達を2群にわけ、1群は 「いつ寝てもいいですよ」 と言われ、もう1群は 「できるだけ早く寝るように」 と言われます。 どちらが早く寝られたとおもいますか? そうです。 一番目の群でした。 睡眠は多分にマインド・ゲームなのです。

もう一つ、睡眠の意外な側面について、今度はもっと脳科学的にご紹介しましょう。こちらをご覧下さい。

我々は、通常眠気が強くなるから眠るんだと思っていませんか? 実は睡眠が起こるメカニズムは複雑で、眠くなるという脳内のメカニズムとともに、「起きていなさい!」 という覚醒を司るメカニズムのバランスで成り立っています。 上の灰色のグラフは眠気のバイオリズム。 下のオレンジは覚醒のバイオリズムです。 夜の10~11時ごろになると、双方が徐々に強まって来ていたのが、覚醒の方だけ若干失速します。 つまり覚醒せよという命令が弱まるのです。 これにより入眠が起こるわけです。 実に精巧なメカニズムです。 脳は我々が意識して考える以前に、眠るべき時、そしてどれくらい眠るべきかを知っているそうです。 またこのメカニズムを見て気づくことは、オレンジの覚醒バイオリズムが夜に失速しないと入眠できにくいということです。 ストレスの多い一日で頭が休まっていなかったり、カフェインで頭が冴えていたり、様々な理由でこの 「失速」 が起きないと眠つけないわけです。 これが夜中におきれば、目が覚めてしまいます。

あなたの快眠度チェック (アテネ不眠尺度)

下に示す各項目で、過去1カ月間に、少なくとも週3回以上経験したものを選んでください。 最後に、各選択肢についている点数を合計します。

問1.寝床についてから実際に眠るまで、どのくらいの時間がかかりましたか?
  • □ いつも寝つきはよい ... 0
  • □ いつもより少し時間がかかった ... 1
  • □ いつもよりかなり時間がかかった ... 2
  • □ いつもより非常に時間がかかった、あるいは全く眠れなかった ... 3
問2.夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?
  • □ 問題になるほどのことはなかった ... 0
  • □ 少し困ることがある ... 1
  • □ かなり困っている ... 2
  • □ 深刻な状態、あるいは全く眠れなかった ... 3
問3.希望する起床時刻より早く目覚めて、それ以降、眠れないことはありましたか?
  • □ そのようなことはなかった ... 0
  • □ 少し早かった ... 1
  • □ かなり早かった ... 2
  • □ 非常に早かった、あるいは全く眠れなかった ... 3
問4.夜の眠りや昼寝も合わせて、睡眠時間は足りていましたか?
  • □ 十分である ... 0
  • □ 少し足りない ... 1
  • □ かなり足りない ... 2
  • □ 全く足りない、あるいは全く眠れなかった ... 3
問5.全体的な睡眠の質について、どう感じていますか?
  • □ 満足している ... 0
  • □ 少し不満である ... 1
  • □ かなり不満である ... 2
  • □ 非常に不満である、あるいは全く眠れなかった ... 3
問6.日中の気分は、いかがでしたか?
  • □ いつもどおり ... 0
  • □ 少し滅入った ... 1
  • □ かなり滅入った ... 2
  • □ 非常に滅入った ... 3
問7.日中の身体的および精神的な活動の状態は、いかがでしたか?
  • □ いつもどおり ... 0
  • □ 少し低下した ... 1
  • □ かなり低下した ... 2
  • □ 非常に低下した ... 3
問8.日中の眠気はありましたか?
  • □ 全くなかった ... 0
  • □ 少しあった ... 1
  • □ かなりあった ... 2
  • □ 激しかった ... 3
【結果判定】

総得点が、

4点未満: まずまずの睡眠。 さらなる改善を目指しましょう。
4~5点: 不眠症の疑いあり。 専門医への相談を考慮。
6点以上: 不眠症の可能性が高い。 早めに、専門医へ相談を。

一つの不眠に対する評価方法です。 ご参考にして下さい。
年齢と睡眠の変化

加齢とともに、

  • 寝つきが悪くなる。
  • 深い眠りが減る。
  • 夜間や早朝の覚醒が増える。
  • 眠りの時間帯が早くなる。

などが一般的とされています。 40代頃から睡眠の減退に気づき、60代以降では8時間びっちりというのはむしろ少数派のようです。

不眠が続くと…

眠れないことが続くと、作業効率の低下、事故、仕事欠勤などで、年間3.5兆円程度の経済的損失があるとの報告があります (1996年アメリカの報告) 。 また、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、 脳梗塞などの疾患のリスクを上げたり、寿命にも影響しうるとされています。 そして、こころの問題が二次的に発生してくることも多いです。

不眠の原因
  • 環境要因: 暑さ、明るさ、時差など
  • 身体要因: 年齢や性差、頻尿、痛み、かゆみなど
  • 心の要因: 悩みやイライラ、精神的ストレス、うつなど
  • 生活習慣要因:アルコールやニコチン、カフェインの摂取、薬物の副作用など

が言われています。 では、どうやったらもっとよく眠れるのでしょう?

不眠克服法
○Sleep Hygiene

日本語では、「よく眠るための心得」 とでもいったら良いでしょうか。

  • 刺激物を避ける : カフェイン、たばこ、アルコール
  • 寝室の環境を快適に保つ。
  • 夕食を軽めにする : 5~6時間前には終える。
  • 就寝、覚醒の時間は一定にする。
  • 本当に疲れた時に就寝する。 20分以上寝れないときはベッドを出る。
  • 時計を見ない。 目が覚めたらベッドを出る、リラックスできることをする。 灯りは暗めに。
  • 日中の昼寝を避ける、あるいは早めに。
  • 夜に水分を適度にとる。
  • 運動をする : 就寝直前の激しい運動は避ける。
  • リラックスできる運動 (ヨガなど)は良い。
  • 適度に自然光にあたる。
  • 入眠までの心地よい規則的な儀式を持つ。
  • 悩み事を持ち込まない。
  • ベッドでは寝る以外のことをしない。
  • 睡眠日誌をつける。

などです。 皆さんもご存知のことが多いでしょう。

しかしこれらをしっかりとやる方は少ないようです。ハーバード大学に睡眠クリニックがありますが、ここでは専門の睡眠カウンセラーが上記の指導をしっかり行います。 その様子のビデオをご参照ください。 上記の心得を睡眠日誌とともに、2週間から1か月 「継続する」 ことが睡眠の改善に必須のようです。 睡眠というのは習慣によるところが大きいからでしょう。

このSleep Hygieneを一歩進め、これらをもとに系統立ったカウンセリングとして治療を進めることもあります。 「認知行動療法」 といいますが、以下の2つがよく知られています。 これらは専門家の指導のもとに行われると、より効果的のようです。

○刺激制御療法

布団、寝室、就寝時刻など、寝れないことが条件付けされている (条件不眠) という考えのもとに、良い睡眠をとるための新しい条件付けを作るという方法です。

  1. 本当に眠くなってから布団に入る。
  2. 寝床は睡眠以外に使わない。
  3. 眠れなければ寝床を出る。 音楽、読書などを暗めの別室で。 本当に眠くなったら寝床に戻る。
  4. 3. を繰り返す (これにより一週間は寝不足になるかも) 。
  5. 起床時間を一定に。 起きたら、朝日を浴び、熱いシャワーを浴び、朝食をとる。
  6. 昼寝はしない。
○睡眠制限療法

人は寝ようとすればするほど眠れない (精神生理性不眠)、本当は眠れているのに眠れてないと思い込む (睡眠状態誤認) という考えをもとに、実際寝床にいる時間と必要な睡眠時間を近づけるように取り組みます。

  1. まず、必要な睡眠時間には個人差があると理解する。
  2. 睡眠日誌を1~2週間つけ、平均睡眠時間をもとめる。
  3. 目標床上時間 = 平均睡眠時間 (中途覚醒は除く) +15分 (最低5時間以上) と設定する。
  4. 就寝時刻=現在の起床時刻—目標床上時間と設定する。
  5. これを一週間続け、平均睡眠時間が目標床上時間の90%以上なら目標床上時間を15~30分延ばす。
  6. 80%以下なら一週間の平均睡眠時間まで目標床上時間を減らす。
  7. 80~90%の場合は、目標床上時間を変えない。
○睡眠を助ける服用薬、サプリメント

非処方薬では、メラトニン、抗ヒスタミン剤などが主流で効果は不特定です。 処方薬では、ベンゾジアゼピン系あるいは非ベンゾジアゼピン系という睡眠剤が主流ですが、習慣性に注意をする必要があります。

習慣性のないものには、メラトニン作用薬、トラゾドンなど、他にも様々な種類がありますが、専門医にご相談下さい。 また覚醒を促す物質として、Orexin (hypocretin) が注目され、この阻害薬が新たな睡眠剤として期待されています。

その他、リラクゼーション法、つぼ (安眠、百会、失眠など)、マッサージ、アロマなど効果は不特定ですが、様々なアプローチも考慮できるでしょう。

除外しておきたい特殊な睡眠障害の例
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • むずむず脚症候群
  • 周期性四肢運動障害
  • レム睡眠行動障害
  • 夢中遊行
  • 夜驚症
  • 睡眠ミオクローヌス症候群

など様々な病態がありますので、専門家への相談が必要です。 睡眠時脳波などにより診断され、各々に特化した治療が施されます。

あなたは眠れますか?
2週間以上にわたって、週3夜以上眠れない場合は専門医へのご相談を考慮下さい。

2013年 4月 25日更新

くがやこころとからだのクリニックでは、
「こころ」 にまつわる様々なご相談や、こころの健康チェック、ケアを提供しています。

▼ドクター久賀谷による「マインドフルネスx脳科学」ホームページを開設しました!

https://www.beinamoment.org

ドクター久賀谷によるマインドフルネス 著書・旅企画・コーチングをまとめて紹介。クリニックと合わせてよろしくお願いします!

▼「患者さまの声」ページ 随時更新中!

https://thmedical.org/diagnosis/testimonials/

クリニックホームページ内で診療を受けられた方の動画・音声、そして寄せられたお手紙などをご覧いただけます。
診療セミナーやマインドフルネス・TMS治療に関する患者さまの声。

▼心療内科専門医による各種プログラム
不安/パニック より早い改善をカウンセリングとお薬またはTMS治療を必要に応じて組み合わせることで実現
うつ
そううつ
睡眠改善
ADHD
OCD
慢性痛
マインドフルネス認知療法
認知行動療法カウンセリング
こころとからだ・プログラム → ストレスによる身体の症状の緩和
トラウマ治療 (EMDR)
禁煙プログラム
仕事ストレス
体重マネージメント
こころの健康相談

※ 当クリニックでは、カウンセリングのみも可能です。

Columnist's Profile

心療内科医久賀谷 亮(TransHope Medical)

イェール大学医学部神経精神科卒。日米医師免許。趣味 : トライアスロン。TransHope Medical / くがやこころとからだのクリニック院長。「TransHope」 は、Transglobally (国境を越えて)、Transculturally (文化を超えて) に、Hopeを手渡していくことを意味します。

眠れない、疲れやすい、集中できない、気分が晴れない、ストレスによるこころとからだの反応、ライフスタイル改善(体重、仕事パフォーマンス、喫煙)、うつ、パニック、ADHDなどに医学的診察とケアを提供します。

TransHope Medical

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