心療内科医
久賀谷 亮 TransHope Medical TEL: 424-247-9642

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第95回 : 
天井のない階段

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被災地の「こころ」
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被災地の「こころ」 2
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人工知能(AI)―人間が引退する日―
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「フェデラーと老いの心理学」
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『こころにまつわるおはなし。』

「こころ」 をキーワードに、様々な話題を提供します。

2012年 8月 22日更新

第10回 : ブレイン・フィットネス

「脳トレ」 が一時期日本でブームであった。 脳のトレーニングのことである。

東北大学の川島隆太教授が提唱する脳の機能 (記憶力など) を改善する方法が一般にも流布されたのである。 ゲームソフトとして提供した任天堂からの監修料12億円を教授が辞退したことでも話題になった。 高齢化社会を受けて、脳機能のトレーニング、脳を若く保つためのいわゆる 「ブレイン・フィットネス」 市場は、日本 ・ 米国ともおよそ300億円の規模と推定され、2015年までには1~5兆円規模に達すると予測されている。 扱う企業名を列記すれば、 “Advanced Brain Technologies, Applied Cognitive Engineering, Brain Center America, Brain Resource, CNS Vital Signs, Cogmed, Cogstate, CogniFit, Cognitive Drug Research, Dakim, Houghton Mifflin, Learning Enhancement Corporation, LearningRx, Lumos Labs, Marbles: The Brain Store, Nintendo, NovaVision, Posit Science, Scientific Brain Training, Scientific Learning, TransAnalytics, vibrantBrains, Vigorous Mind, Vivity Labs” などなど多数である。

人間が長生きすれば、それだけ脳の老化とつき合わなければならなくなる。 ある国のデータでは、65歳以上の20人に1人、85歳以上の4人に1人に認知症がみられるとある。 かつて脳細胞は死滅していくだけであると考えられていた。 しかし、1990年代後半に 「海馬」 と呼ばれる脳の領域で、新たに脳細胞が作り出されていることが発見された。 新鮮な驚きとともに脳は衰えいくばかりではない、という希望が出てきた。 それは高齢化する人類にとって朗報であった。 脳を若く保つべく、積極的に働きかけようという流れが台頭してきたのである。

残念ながら、「脳トレ」 あるいはブレイン ・ フィットネスの効果は、そこまで確実に証明されてはいない。 川島教授の理論の元になっている一つの研究も、小規模なもので方法論的に不十分な点がある。 いわゆるブレイン・フィットネス全体でみても、ある程度の効果は期待されるものもあるが、確実な科学的根拠を持ち合わせていないのが現状である。 今後、より根拠のある方法が確立されるのを待ちたい、と言いたいところだが、そう言っているうちに寿命が来てしまうのでは? という方のために、現在の 「脳トレ」 ブレイン ・ フィットネスで言われている脳を若く保つ基本的な方法を幾つか示してみよう。

  1. 簡単な計算をする
  2. 音読をする
  3. 会話、社交的な活動をする
  4. 新しいことを学ぶ (言語、音楽、はたまた、自宅への帰り道を変えてみるなど)
  5. 手先を使う
  6. デジタルよりアナログな生活をする (インターネットやテレビより、手紙を書いたり、読書をしたり)

などである。

ブレイン ・ フィットネスは、根拠の弱さに加え、その他の欠点も指摘されている。 例えば、クロスワードパズルは頭の体操によいと頻繁に言われるが、こればかりをやっていてもクロスワードが上手になるばかりで、他の脳の働きにはあまり効果がない、という指摘。 あるいは、こういった脳、記憶の体操は本人にフラストレーションがかかりやすい。 また効果があってもその持続がみられにくい、などである。

ちなみに、ブレイン ・ フィットネス業界側に立ってみると、先に挙げた企業のうち こちら を参考にされたい。 このブレイン ・ フィットネス・プログラム (幾つか無料で試せるので、試してみると分かりやすいであろう) に取り組んだ結果、様々な脳機能 (記憶、注意力など) が改善し、持続したとデータをもって謳われている。 このようなデータがより蓄積され、この業界の総体として科学的根拠が伴った方法が確立されていくことが今後の課題であろう。 (我々の寿命の前に是非ともと願いたい)

では、ブレイン・フィットネス以外で、脳の老化や認知症への予防方法はないのであろうか。

より確立された有効な方策としては、

  1. 害になる習慣をやめる。 高血圧、糖尿病、高コレステロールのある方は、その数値をできるだけうまくコントロールする。
  2. 運動
  3. 食生活
  4. 社交的な活動

などである。

2の運動について。 実は、ブレイン ・ フィットネスよりもフィジカル ・ フィットネス (運動) の方が、記憶機能の改善に効果があることが繰り返し、より確実に科学的に証明されている。 もとになる研究データの一つは、こちら を参考にされたい。 この研究では、無作為に60代半ばの参加者を有酸素運動をする群、しない群 (対照群) にわけ、有酸素運動群では、 1日10分の歩行からはじめ、毎週5分ずつ距離を伸ばし、7週間後には一日40分歩行し、それを1年間継続させた。 心拍数のターゲットは最大の60~75%を7週以降は維持した。 一年後の結果は驚くべきもので、有酸素運動を続けた群で、脳の海馬 (記憶を司る) の容積が2%増加 (!) し、年齢に対して1~2歳若いレベルになっていた。 さらに、記憶機能もあわせて改善したという。 それに対して対照群は、むしろ海馬の容積が減少し有酸素運動群と比べて容積、記憶力ともに有意に劣っていた。 このように非常に厳密に行われた研究が、この研究のみでなく、繰り返して、運動の効果を証明している。

いかがだろうか。
あなたがもし運動が可能であれば、どうやらこれはより確実性の高い 「脳を若く保つ方法」 のようだ。

閑話休題。 3の食生活について。 最後に、最近100歳を迎えられた日野原重明先生( 「生き方上手」 などベストセラーの著者であり、現役の医師) の三食は以下のようだそう (朝日新聞でのインタビューより)。 あくまでも参考までに。

運動も食生活もご自分の状態に合わせて。

【朝食】
* りんごジュース
* オリーブオイル (ティースプーン4杯)
【昼食】
* クッキー3枚
* 牛乳
【夕食】
* 脂身のないステーキ (週2回) または魚料理
* サラダ

2012年 8月 22日更新

くがやこころとからだのクリニックでは、
「こころ」 にまつわる様々なご相談や、こころの健康チェック、ケアを提供しています。

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ドクター久賀谷によるマインドフルネス 著書・旅企画・コーチングをまとめて紹介。クリニックと合わせてよろしくお願いします!

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Columnist's Profile

心療内科医久賀谷 亮(TransHope Medical)

イェール大学医学部神経精神科卒。日米医師免許。趣味 : トライアスロン。TransHope Medical / くがやこころとからだのクリニック院長。「TransHope」 は、Transglobally (国境を越えて)、Transculturally (文化を超えて) に、Hopeを手渡していくことを意味します。

眠れない、疲れやすい、集中できない、気分が晴れない、ストレスによるこころとからだの反応、ライフスタイル改善(体重、仕事パフォーマンス、喫煙)、うつ、パニック、ADHDなどに医学的診察とケアを提供します。

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